彼の視線、私の視線

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「最初は気のせいかなーって思ってたんだけど、『恋』とか『好きな人』とかのワードが出てくると、チラッとこっち……ていうか、リナを見ててさあ……」 「これはこれは……」  ゆいちゃんまでも、にやにや笑いを浮かべて私を見る。  2人に見られながら、私は席替え前の山下くんとのやり取りを思い出していた。 『森本さんって、なんの部活入ったん? 因みに、俺は科学部』 『歴史って、なんでこんなに眠いんやろう。森本さん、眠くならない?』 『課題あったの忘れてて、寝る前に始めて終わったの2時! 授業中寝落ちしてたら、起こしてくれる?』 『理数系は得意だから、いつでも聞いて! その代わり、英語教えてくれる?』  山下くんは、いつも気軽に話しかけてくれた。その気軽さが心地よくて、楽しかったと今さら思う。今隣の宮嶋くんは、話すどころか私を見ようともしない。自分の存在を否定されているようで、時々悲しくなる。 「あれれぇ? 顔、赤いよ」 「ほんとだ。どうかしたの?」  2人はにやにや笑いを深くしながら、からかうように言った。  慌てて押さえた頬が、少し熱い。意識すると、ますます熱くなってきた。 「べ、別に、何でも……ちょっとトイレ行ってくる!」  熱が上っていく顔をこれ以上見られたくなくて、慌てて教室を出た。
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