彼の視線、私の視線

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 私を見ていた人は、山下くんだった?  トイレの鏡を見ながら、そっと右の頬を撫でる。山下くんが右隣で良かった。右の頬は、左より肌荒れがマシだったもの。 「今も、山下くんが隣だったら良かったのに……」  前よりほんの少しきれいになった私を、山下くんに見て欲しい……そんな思いが頭をかすめる。かすめた思いを振り払うように、ぶるぶると強く頭を振る。  山下くんが私を見ていたなんて、ある訳ない! また、勘違いに決まってる! 山下くんが話を聞いていたっていうのも、ゆいちゃんに教えていたスキンケアの方法かもしれない! うん、きっとそうだ!  もう恥ずかしい勘違いをしないぞと自分に言い聞かせ、顔の赤みが消えたのを確認してから、トイレを出た。
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