昼は消えつつ物をこそ想え

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 何やら思い付いたのだろうか? 男が突然叫んだ。 「あっ、そうか‼もう正式に継いだんだったな!お披露目会は延期する旨の知らせが届いていたが・・・・・・」  ほんの少しのヒゲの剃り残しも許されていない自分のを、男は撫でさすった。 「えぇ。先日、インターネットで配信した花火は観てくれましたか?」 「おう、観たぞ。なかなか盛大だったな。――見事なものだった」  柊の言葉にすかさず、男は上を向いていた視線を柊へと戻した。 柊も又、間を空けずに男へと応酬する。 自分の真向かいに座る陽光へと右手を差し向けた。 「その時の花火はこの彼が打ち上げたんですよ」 「え?」 「・・・・・・」  まんまと柊の手と言葉とに誘導された男は陽光を見た。 男のあからさまな視線を一身に浴びても、陽光の表情は一切変わっていなかった。 ――柊の目にはその限りではなく映ったのかも知れない。  正確に言うのならば、陽光は打ち上げに携わった人間の一人だ。 依頼主である『銀柊荘』、つまり柊との打ち合わせは一手に引き受けた。 しかし実際の作業には父親の照夫以下、五嶋煙火の従業員たちと一緒になって行なった。  柊が続ける。 「コウジさんに紹介します。五嶋(いつしま)陽光(あきひろ)、おれの幼馴染みで恋人です」 「⁉」
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