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突然、柊が叫び出した。
「ツインの部屋を予約したんだ‼」
「えっ?」
驚いた陽光の様子に、柊も又驚き途端に我へと返る。
一転、声を潜めた。
「おまえと一緒に泊まろうと思って」
「柊――」
ボソボソと、――細ぼそと柊が続ける。
うつむいた顔をさらに右へと背けたので、けして聞き取りやすくはなかった。
しかし、陽光には確かに聞こえた。
柊の赤い左耳が陽光の真正面を向く。
「おまえが泊れるかどうかも分からないのに、予約をした」
「・・・・・・」
「勝手なことしてすまなかった――」
柊は本心からそう思った。
陽光は陽光で、ちゃんと自分のことを考えてくれていた。
何時もはもてなす側の自分を、ちゃんともてなそうとしてくれていたのだ。
うれしかった。
それを全くの手放しで喜べなくしてしまったのは、他ならない自分自身だと柊は思った。
陽光が無言で立ち上がる。
そして柊の傍らへと立ち、その腕の付け根を掴んだ。
「行くぞ」
「えっ?ど、どこにだっ⁉」
見上げた柊の目と陽光のが合う。
まるでそれが合図の様に、陽光がほぼ垂直に柊の腕を引っ張り上げた。
柊の腰は実に軽がるとソファーから宙へと浮いてしまう。
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