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対する陽光はというと、無理矢理貼り付けられてしまったかの様なしかめっ面だった。
元もとゴツい、――もとい厳つい顔付きだ。
しかも、体格までもがガッシリとしている・・・・・・
そんな容姿の四十近い男が菓子折りの紙袋を両手にぶら下げて、仁王立ちをしている――。
そう思うと、柊は笑いがこみ上げてくるのを感じた。
笑顔の上にさらに笑いを乗せ積み重ねた。
『破顔一笑』を通り越して、もはや『爆笑』の様相だった。
「――何が可笑しいんだ?」
大抵のことには動じない陽光だったが、さすがにあからさまに訝った。
ほとんど呆れていたと言っても過ぎない。
そんな陽光の姿をチラチラと窺いながら、柊はなおも笑い続けた。
その合間にようやく滑り込ませて、理由を話した。
「いや、おまえがどんな顔をしてこんなに可愛らしい菓子を買い求めたのかと思うと――」
柊は何とかそこまでを言い終えたが、その後はもう言葉にはならなかった。
小さくだが、くつくつと喉を鳴らし続ける。
「・・・・・・」
一方、今現在、柊の目の前に佇む陽光は『憮然』という言葉そのままの表情をしていた。
――土産の菓子折りを買う際の顔がどうのこうのだなんて、普通は思い至らないだろう。
思いも寄らないはずだ。
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