行くも帰るも別れては

4/7
前へ
/179ページ
次へ
 陽光はそう考える。 当の本人がそうにもかかわらず、柊は違う様だった。 陽光が菓子としての美味しさを追い求めて『ひよこ饅頭』を買い求めただろうことは柊にも分かっていた。 だからこそ、そのままの素の表情だっただろうと想像(妄想?)した。  以前、手渡してきた陽光にもズバリ選択(チョイス)の理由を聞き及んでみた。 陽光は何の含みもためらいもなく、『会社の先輩が美味しいと言っていたから』とすぐさま答えてきた。 ――全くその通り、そのままなのだと柊も思う。  手土産の造形(見た目)になどまるでこだわらない辺りが、何とも陽光らしい。 微笑ましくて、――そして、ただ愛おしい。 そこまで思った、想ってしまった柊はついそのままを口に声に出してしまった。 「可愛い。――可愛いよ、陽光」 「な、なっ、何を・・・・・・」 言っているんだ⁉柊!と叫びかけて、陽光は思い留まる。 不意に思い出しもした。 確か、柊と初めて寝た時に自分も同じ様なことを言った。 それも、何度もなんども――。  その時は本気で本当にそう思ったから言っただけだった。 自分へと秘められた体の奥のおくを晒し許した柊が、心底愛おしくて愛らしかった。  それと同じ様なことなのだろうか・・・・・・? 陽光はそう考える。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加