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陽光はそう考える。
当の本人がそうにもかかわらず、柊は違う様だった。
陽光が菓子としての美味しさだけを追い求めて『ひよこ饅頭』を買い求めただろうことは柊にも分かっていた。
だからこそ、そのままの素の表情だっただろうと想像(妄想?)した。
以前、手渡してきた陽光にもズバリ選択の理由を聞き及んでみた。
陽光は何の含みもためらいもなく、『会社の先輩が美味しいと言っていたから』とすぐさま答えてきた。
――全くその通り、そのままなのだと柊も思う。
手土産の造形になどまるでこだわらない辺りが、何とも陽光らしい。
微笑ましくて、――そして、ただ愛おしい。
そこまで思った、想ってしまった柊はついそのままを口に声に出してしまった。
「可愛い。――可愛いよ、陽光」
「な、なっ、何を・・・・・・」
言っているんだ⁉柊!と叫びかけて、陽光は思い留まる。
不意に思い出しもした。
確か、柊と初めて寝た時に自分も同じ様なことを言った。
それも、何度もなんども――。
その時は本気で本当にそう思ったから言っただけだった。
自分へと秘められた体の奥のおくを晒し許した柊が、心底愛おしくて愛らしかった。
それと同じ様なことなのだろうか・・・・・・?
陽光はそう考える。
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