行くも帰るも別れては

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 柊が素早くジャケットの内ポケットを探った。 和装時には帯に挟んでいた懐中時計を、今度は言葉通り(ふところ)から取り出す。 文字板を見れば、針は乗り込む予定の列車がもうとっくに到着している時刻を指し示していた。 それどころか発車までもが間近に迫っている――。  依然、紙袋を両手に下げたままの陽光が平時よりも大股の早足で歩き出した。 陽光は柊が後ろをついて来ていると、まるで疑っていない様だった。 全く振り返ることなく特急列車が到着するプラットホームを目指していく。  改札口を通ったところでようやく陽光が足を止めた。 そして、柊を顧みる。 「どのホームだ?」 「――こっちだ」  そこから先は柊が先導した。 洋装(スリーピース)姿ということもあって、柊も又平時よりも大股で早歩きだった。 そして陽光と同じく、やはり一度も後ろを振り返らなかった・・・・・・
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