衣片敷き独りかも寝ん

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 陽光から紙袋を受け取る際に、柊の手が陽光のに触れたのは全くの偶然だったのだろうか? 柊が握りしめたかったのは紙袋の取っだったのか、それとも陽光のだったのか・・・・・・  陽光本人は判じ得ぬまま、柊が紙袋をグイッと引き寄せた。 都合、柊の体が顔が陽光へと近づく。 陽光はほんの耳元でささやかれた。 「おまえが買ってきたの以外は食べない――」 だから、早く帰って来い。と暗に催促(おねだり)されている様に陽光には聞こえ、思えた。  高まり、早まる陽光の鼓動に重なる様にして発車時間を告げる合図の音が鳴り出した。 陽光は完全に手を放した。 それでも紙袋はホームの上へと落ちなかった。 柊がしっかりと取っ手を握りしめていたようだった。  柊が陽光を見て言う。 「ありがとう」 「気を付けて」  柊が特急列車へと乗り込んでもなお、陽光はその場から動こうとはしなかった。 ただ、立ち尽くしていただけではない。 陽光としては帰って行く柊をちゃんと見送りたかった。 見届けたかった。  程なくしてプラットホームから滑り出す様に音も無く、列車は走り始める。 一瞬だけ、窓際へと座る柊とホームへと立ち尽くす陽光との目が合った。  柊は左手を顔の位置の高さまで引き上げていた。 陽光以外の口さがない誰かが見ていたのならば、「気取りやがって!」と悪態を吐き兼ねない仕種だった。
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