閨の暇さえつれなかりけり

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 ダボダボとし過ぎず――、又ピッタリともしすぎていないパンツ(ズボン)へと包まれている脚を組み、柊は陽光を見る。 その顔は、陽光の目には確かに『笑っている』様に映った。 「さて、わざわざ部屋までついて来たんだ。おれが着替えるのを手伝ってくれるつもりなんだろう?」 「何をすればいいんだ?」  陽光が問いを口にする。 聞いた柊は、やや驚いた様に目を見開いた。 それこそ、さっき言ったばかりの自分の言葉通りに『火を見るよりも明らか』だった。  陽光は、柊の口から言わせたくてわざととぼけているわけではけしてない。 それは、それだけはかろうじて柊にも分かった。 しかし理由がまるで分からない。  実に、陽光が考えていたのは(ただ)一つのことだけだった。  柊がされたくないと思うことは、けしてしたくない――。  ただ、それだけに尽きる。 極めて単純(シンプル)な理由だった。  生まれながらにして接客業の柊であっても、超能力者(エスパー)では有り得ない。 よって、陽光の考えを全て読み取ることは出来なかった。 ――だから、単刀直入に(ズバッと)切り込んだ。 「脱がしてくれ」 「・・・・・・」  今度こそははっきりと、柊は笑っていた。 未だに室内の照明が灯されていないのにもかかわらず、陽光には分かった。
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