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クローンで子孫を残すセイヨウタンポポ。
なぜ無駄としか思えない花粉や蜜を作る個体がいるのか?
セイヨウタンポポが、初めて日本に上陸した場所は、札幌。
今から100年以上前の話。
ヨーロッパからやってきたセイヨウタンポポにとって、札幌の気候は暮らしやすかった。
暮らしやすかったついでに、持ち前の繁殖能力で、どんどん南へと進出していった。
が、南へ行くに従い、セイヨウタンポポは暑さに弱く、繁殖力がぐっと減ってしまった。
生き残るために考えた方法は、在来種のタンポポ「カントウタンポポ」との交配だった。
カントウタンポポは、ごくごく平凡なタンポポだった。
しかし、都市化が進んだ地域では住みにくさを感じていた。
「もっと強くなりたい。
そう、西洋からやって来た、あのマッチョなセイヨウタンポポのように」
と思ったかどうかは、定かでないが。
この2種類のタンポポは、互いを求めるようになった。
セイヨウタンポポは、カントウタンポポと交配するために花粉を作った。
なぜなら、セイヨウタンポポはクローンで子孫を残せるので、相手の花粉はいらないからだ。
カントウタンポポは、セイヨウタンポポと交配し、雑種を生み出した。
そのため、純粋なカントウタンポポの数は年々減ってしまっている。
このことは、セイヨウタンポポにも言えることで、暑さに弱いセイヨウタンポポはその姿を消し、姿がそっくりな雑種タンポポにとって代われた。
今、セイヨウタンポポだと思われているタンポポの約8割が、実は雑種タンポポなのだそう。
カントウタンポポから生まれた、雑種タンポポの繁殖方法は、クローン。
暑さに強いため、一年中繁殖することができる。
そのため、どんどんその勢力を増していった。
雑種タンポポの特徴は、見た目がセイヨウタンポポで、カントウタンポポの花粉や蜜を持つという性質を受け継いだ個体である。
無駄だと思ったタンポポの「花粉や蜜を作る」という性質は、まさに雑種である証というわけだ。
これからも無駄な機能を備えたまま、タンポポは増え続けるのだろう。
なんといってもクローンなのだから。
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