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フランケンシュタインが怪物を生み出したきっかけとはなんだったのか?
彼は生と死についてこう述べている。
「人間の美しい形がどんなふうに衰え萎れて崩れるかを私は見た。生の華やかな頬を襲う死の腐敗を見た。眼や脳髄の素晴らしさを蛆虫の類がかたずけてしまうありさまも見た。
生から死へ、死から生への変化に例証されるようなあらゆる因果関係を、仔細に検討し、かつ分析しているうちに、とうとう、この暗闇の中から、一筋の光が突然私の上に差し込んできた。」
彼はその後、2年間という歳月をかけて、ついにそれを完成させた。
それは同時にこの瞬間から、悲劇の連鎖が始まることを意味していた。
最初の犠牲者は、フランケンシュタインの弟だった。加え、無実の罪を着せられて処刑された善人な使用人へと派生する。
この出来事から、フランケンシュタインにとって怪物は、恐れるものから憎むものへと変貌した。
一方、怪物は、いく先々で理不尽な差別によって何度も殺されかける。
彼は高い知能と優れた身体能力を持つスーパー人造人間だった。けれど悲しいことに、知能が高いことこそが、怪物にとっての悲劇だった。
彼は、自分が惨めで孤独で不幸だと知り、自分を造ったフランケンシュタインを含む、全ての人間を憎むようになった。
そしてある時偶然出会ったフランケンシュタインの弟を絞め殺し、その犯人は善人な使用人になるように細工した。
フランケンシュタインと怪物が再会する場面は、この作品の大きなヤマの一つだったと思う。
怪物は憎むべき相手、フランケンシュタインにこう言った。
「私はひとりぼっちで惨めなのだ。けれど私と同じように醜い恐ろしい者なら私を斥けやしないでしょう。私と同じ種族で同じ欠点を持っている女性を、あんたに造ってもらいたい」
この要求に対して、フランケンシュタインはきっぱり断っている。
もし怪物が弟を殺害しなかったら。と、思わずにはいられない。
フランケンシュタインは人道に反した人間だけれど、僅かな同情の心は持っていた。
誰が愛するものを殺した相手の要求に応えるだろうか。
しかし怪物にも言い分がある。
怪物はフランケンシュタインに向かって「あんたを破滅させる」と憎しみをあらわにしたが、それではなにも解決できないと悟り、懇願した。
「もしも誰かが私に慈悲深い気持ちをくれたなら、私はそれの何万倍にもしてお返しする。
その一人のために、全人類と和解してもいい。
私は私を造ったあんたにお願いする。私を幸せにしてください。一つだけ恩恵を施して、私に感謝の気持ちを向けさせてください。誰か人間から同情してもらえるということを、私に分からせてください」
フランケンシュタインはこのセリフを聞いて少しだけ心を動かされた。けれど、身内を殺された憎しみと怪物の醜い姿を見て、再び断る。
が、最終的には、怪物の熱意に負けて「怪物に連れ添う女性を造った暁には、永久に人間が近くにいるあらゆる場所から立ち去る」という条件をつけて承諾した。
私はこの約束は妥当ではないかと思った。お互いの妥協点であるとも思った。
しかしそれは、お互いが公平な立場であったならば、の話だった。
フランケンシュタインにとって怪物は、つまるところ、人間ではないのだ。
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