「フランケンシュタイン」

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フランケンシュタインは約束通り、女の怪物を造る作業を始めるが、仕事が進むにつれ、日増しに嫌になった。 あれほど憎んだ存在をもう一体造ることへの嫌悪。それはだんだん、なぜ自分は怪物を造らなくてはならないのか?という疑問に変わり、疑問は加速し、疑心暗鬼に駆られる。 「あの魔物(怪物)が渇望しているのは、女の怪物との間に子を設けることだろう。そうなったら、この悪魔の一族が地球上に繁殖し、人間の存在そのものを、破滅させてしまうかもしれない」 このような末路を想像し、身震いした彼は、あの約束は間違いだったと気づく。 ちょうどその時、フランケンシュタインの前に、再び怪物が現れた。 怪物は現れるべきではなかったと、私は思う。 彼は知能は高いが、どうにもタイミングが悪い。 人間に迫害され続けたのも、このタイミングの悪さが要因の一つだと私は考える。 果たして、フランケンシュタインは逆上し、怪物の目の前で、造りかけの人造人間を粉々に打ち砕いてしまった。 ここでの二人のやりとりは、これから先続く悲劇を予感させる。 怪物はフランケンシュタインへの復讐を宣言した。そして最後に「お前の結婚式の夜には行くからな」と言い残して去った。 婚約者がいるフランケンシュタインは、結婚した夜に怪物が自分を殺しにくると考えた。 だから彼は「激しい格闘を演じないでは、敵の前に倒れないぞ」と決意した。 悲しいかな、フランケンシュタインは、人間を造るほどの優秀な科学者ではあるけれど、人間の心理や本質を見分ける目は持っていなかった。 復讐を誓った怪物が望むのは、フランケンシュタインの不幸だ。 自分と同じように、世界から取り残される孤独を味あわせること。 怪物は彼の親友を殺害し、結婚式の夜には、彼の花嫁をも殺害した。 花嫁を実の娘のように可愛がっていたフランケンシュタインの父親もまた、ショックで死んでしまった。 怪物が望む通り、フランケンシュタインは、いっそ死んだ方がどれほど楽かと死を願うほどの苦しみと孤独を味わうことになった。
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