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年が明けると、これまで以上に時間の加速度はあがり、あっという間に受験の日が訪れた。
卒業式後の打ち上げでバスケット部の集まりがあった。男子女子も集まり、受験で溜まっていたストレスを吐き出すかのようにはしゃいでいた。
京都の大学に合格を決めた絢香はでの一人暮らし準備があるからと来ることはなかった。
二次会となったカラオケボックスで高梨が美沙の隣に座り込んできた。
「A大学に決まったんだって?」
誰から聞いたのか、高梨は美沙の合格した大学名を知っていた。「あ、うん」と美沙は返した。こうして並んで話すことは随分久しぶりだった。
高校二年の終わりに告白を断られてからは、美沙は高梨と表面上の会話しかすることはなかった。クラスや部活では最低限の会話はしても、それまでのように仲良く過ごすことはなかった。
「高梨もD大学に合格したって聞いたけど」
「あー、うん。でも……浪人して、もう一年しっかり勉強して別の大学受けることも考えてる」
「そう……なんだ」
「まぁ……どの道がいいかなんてよくわからないんだけどさ」
「道かぁ……。そういえば、私も高校時代に描いていた道は実現しなかったなぁ」
「……それってオレへのあてつけで言ってる?」
苦笑する高梨に絢香は舌を出して笑った。
こうして話せるようなってよかったと美沙が思っていると、ある男子部員が高梨を呼んだ。高梨は大きな声で返事をして立ち上がり、そちらへと歩きだした。
「あ……」
テーブルにスマホを置き忘れたままであることを呼び止めようとしたが、ちょうど受信したLINEメッセージを見た瞬間、美沙は凍りつき声を出すことができなかった。
それは『Ayaka』と表示される名前からのメッセージだった。
『私なんかのために浪人とかバカなの?』
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