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その容姿もあって高梨は校内の女子から人気を博していた。何組の女子が高梨に告白したらしい、という話を聞くたびに美沙には緊張が走り、「断った」と高梨から聞いては胸を撫でおろしていた。
「高梨ってモテるのに誰とも付き合わないんだね」
「だって、あの子たちってオレのことを外見しか知らないだろ? オレの意志って言ったら大げさだけど、考え方とか何も知らない。オレを『もの』みたいに見てるだけな気がしてさ。あの子たちの『欲しいものリスト』に入ってるだけな気がして」
その言葉を聞いたときに美沙は「自分は違う」と自分の中で断定できるのか、自信が今一つ持てなかった。
自分もまた高梨を「欲しいものリスト」に入れているだけではないのかと。
*
『で、私にどうしろと?』
また夜になり、美沙は絢香に電話で話していた。
「……私は恋に恋してるだけじゃないのかな?」
その質問にしばしの沈黙があり、ややあって絢香は
『あんたバカなの?』
と言った。絢香が「バカ」という時はその言葉どおりの意味でなく、本当は相手を思ってくれているからこその言葉だとこの二年で美沙は知っていた。
『恋するから相手が気になって、相手が自分をどう思うか気になって、相手の未来を自分の未来の結び付けたくなるんでしょ? 別に「欲しいものリスト」でも何でもいいんじゃない? 自分と相手の運命を結び付けた先が欲しいんだし』
絢香の言葉は美沙の胸の奥へと澄んだ水が流れ込むように入ってきた。高梨への気持ちは間違いではないと確信を持つことができた。
「絢香って」
『なに?』
「本当に私と同じ年? 人生経験が倍ぐらいあるんじゃない?」
電話の向こうで絢香が笑う声が美沙の耳に届いた。
『残念なことにあんたと同じ年ね。人生経験なら大差ない』
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