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第十六話 妹の誕生
そして、次の日の午後。
「すまないな」
「いいえ、前もってわかっていたので、こちらは大丈夫、いざとなったらほかの先生に手伝っていただきますので」
では、後はよろしくと、僕の手をぎゅっとつかんだ師匠は、、師匠の傘にまたがって、ラウルと病院へ向かったんだ。
生まれるのは夜になるかもしれないから、学校が終わってからでいいって言われていたんだけど、落ち着かないパパは、早めに学校を出たんだ。
僕はダン先生とお昼を食べた、パパも食べたか聞いたら。
なんでも今日は仕事が手につかなくて、生徒にも笑われるし、先生方にも笑われる始末。
女性の先生方には大丈夫よと言われるが気が気じゃなくてな。というパパの顔は少し赤くなっていたよ。僕を見ると、ちゃんと食べてきたからと頭を撫でられたんだ。
部屋にママはいなかった、看護師さんに聞くと、違う部屋に移動したというのだ、案内してもらうと、そこには大きなおなかを抱え順番を待つ女性たち。そしてうろうろする男性陣。
おかしいの。
そうだな。
僕とラウルはくすくす笑っていたんだ。
奥さんがいて、僕はパパに引っ張られるように、そばに行った。
心配そうに大丈夫と聞くパパ。
まだ平気というけど、時々苦しそうな声と、ぎゅっとパパの手を握り、はあ、はあと息をするのに僕は頑張れということしかできないくて。
パパが横で、背中を擦っているから、僕も手伝ったんだ。
すると、パパの前にパパがいつも着るような白い服を着た一人のおばあちゃんが立った。
「あんたさん、魔法使いかネ?」
手の甲を隠したパパ。
「隠さんでもええ、同じ人の子だ」
と彼女は言うと、ちょっと力を貸してほしいというのだ。
行ってあげてというママ。
パパは僕に頼むなと言っておばあさんについていった。
端の方で壁にもたれ座っている女性がいた。
「私よりもつらそうね」
「なんかおかしいね?」
「あら、どうしてそう思うの?」
青い顔、具合が悪そう。
それとなんだかママよりもお腹が大きいような気がする。
「さすがね、小さな薬師さん、よく見ているわね」とママが撫でてくれた。
おばあさんはパパの手を取り、お腹に手を当てている。
「大丈夫だよね?」
大丈夫よとママは僕を撫でてくれた。
しばらくするとパパが僕を呼んだ。
「いっておいで」
…でも。
「大丈夫、パパのお手伝いをしてあげて、お兄ちゃん」
お兄ちゃん、なんだか胸の奥がこそばゆくて、うれしくて、もじもじしながらパパのそばに行った。
おばあちゃんがこういったんだ。
「よいか、今腹の中で赤ん坊はたった状態だ、それを反対にして、頭が下を向くようにする、わかるか?」
「うん」
「じゃあ、頭の中で、それを想像しろ、さかさまにするんだぞ」
「うん、さかさま、さかさま・・・」僕の後ろからおばあちゃんの手がにょきっと出てきて、僕の手を取ったんだ。
「横になれ」と言うと、女の人はもそもそとそこに寝そべった。腹に手を当てた。
「いくぞ!」
「はい!」
「うん!」
僕は、逆さま、逆さま、頭が下を向けと念じた。
ふぅ、ふぅと短い息を吐く女の人。
「まだ負踏ん張るな、力を抜け、もう少しだ」
んーという女性の顔はみるみる赤みを帯びてきた。
僕もつられて、んーとお腹に力を入れた。
それにつられるように女性もまた、ウーンと言い始める。
「誰かおらぬか!」
はいと看護師がやってきた。
「このまま分娩室へ運ぶ、うまくいった、そのまま待つように」
女性は数人の看護師に抱えられベッドに、そのまま隣の部屋に運ばれた。
「いやー助かった、すまなかったな」
いいえ、大丈夫ですか?とパパが聞いた。
めったにいないんだがな、逆子だという。ありがとうと言うと、僕の頭を撫でてくれた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
うれしくて、へへへと笑った。
ママのところに戻ると、よくやったわねと抱きしめ頭を撫でてもらった。
周りの方々がお疲れ様といってくれた。
「先生だったんだな」
そうみたいね、知らなかったわというママ。
おギャー、おギャーと元気な声が聞こえては、次々女性たちが中に入っていく。
ふっふっと呼吸を整えるママ。でも僕眠くて…。
「大丈夫か?」
「ええ、平気よ、新しい命が誕生するんですもの、楽しみよ」という二人の声が遠くて、それにママとパパが撫でてくれるからもっと気持ちがよくて…。
僕はママの膝の上で寝ちゃったんだ。
目が覚めて、僕の隣には、お猿さんみたいな子が寝ていた。
生まれたの?
そうよ、女の子だよ、君はお兄ちゃんになったんだよとパパに言われた。
「パパ、ママと同じところに星ができちゃった?」
目と耳の間には〇の中に星、真っ赤な小さな顔に小さく、小さく浮かんでいる。
「そうだね、彼女は正真正銘、僕たちの子供、そして、先祖はとても良い行いをしてんだね」
肩にできた三つの星を見て、お兄ちゃんと同じだとパパとママに抱きしめられてとっても嬉しかった。
帰ってきてから、お薬は使ったのか聞いた。
だって、僕が寝た時はまだ明るかったんだもん。
この部屋に戻って来てから、お薬に混ぜて使ったんだって、ママがキラキラ光ってきれいだったんだよってパパが教えてくれた、見たかったなー。
そしてパパは僕の事も話してくれたんだ。
僕の頭には、神様から頂いた、二重の星が刻まれているんだって、それは王家の証で、僕はどこかの王族だったかもしれないんだって。
聞いたよ、アンジェリカ先生に。いいことをしたあかしだもん、僕は胸を張っていられるよ。
そうかといってパパは僕の肩を引き寄せた。
「私は感謝しているんですよ、こんなに賢い子を息子にできたんです、こんなに素晴らしいことはないですからね」
僕はそれを聞いたら、鼻の奥が痛くなって、目をパチンと閉じたら、涙がぽろぽろこぼれてきたんだ。
パパは僕をぎゅっと抱きしめてこう言ったんだ。
「ニッキー、私たちのもとへ来てくれてありがとう。お兄ちゃん、これからは妹のことよろしく頼みますよ」
僕は、パパに抱き着いて、大きな声を上げて泣いたんだ、なんだかとっても胸が熱くて、苦しくて、それでもうれしくて、なにがなんだかわからなくて泣いていたんだ。
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