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第一話 僕の相棒
十一月、この月だけは満月が二回昇る。
その二回目を中心に祭りが行われる。
各国の中央にある教会を中心にバザールが立ち並ぶのだ。
商人や農家が店を出し、近隣の国々から魚や肉が運ばれ、見たことのない骨とう品なんかも並ぶ。なんといっても、魔法使いが作るマジックアイテムが並び一部は安売りするため、多くの人が集まる。
祭りの名は収穫祭。その年の収穫に感謝するもので、この国の一番大きな教会ではいろんな催しが行われる。
その一つにして最大の催しは、魔法使いになりたい人たちが国中から集まり、神様の前で祝福をもらえるかどうかの儀式があるんだ。ここで祝福をもらえなかった人は魔法使いにはなれないんだよ。
でも、去年の事はよく覚えていない。
カボチャのランタンは、三日後には僕のおなかの中にスープとしておさまってしまった。
それは覚えていた、なんでかって?ランタンはまるで人が笑っているような大きな口が特徴。それをママ、じゃない、奥さんがザック、ザックと切り刻んでいた、それが何だかかわいそうで、だから覚えている。
楽しかったよとラウルは言っていたけど・・・。
顔を撫でる肌触りの良い毛皮。
でもあんまりパタパタ叩くのが鬱陶しくてつかんだ。
ラウルの黒いしっぽが手の中でうねうねと動いている。
もう。目が覚めちゃったじゃないか。と尻尾を投げつけるたら、ニャーと猫のように鳴いた。
っていっても猫なんだけどさ、僕が知っている時にはもう言葉を話していたから、普通の猫はニャー、ニャーとしか言わないのが不思議だったんだけど、それが反対だって言うのをつい最近知ったんだ。
僕はニッキー、そしてこいつは黒猫のラウル。
僕は捨て子で、ラウルはそんな僕を守ってくれた大事な相棒だ。
村の端にある小さな家に僕を拾って育ててくれた、キュルイージュ・ロムとマリアと一緒に住んでいる。小さい家だけどお花がいっぱい、いろんな野菜も植えてある。庭だけは自慢できるかな。
朝日は、もう、カーテンを押しのけ部屋の中を明るくしていた。
やばい、起きるぞ!
体を起こした。
「もう少し―」
ほらね、しゃべった。
寝てていいよ。
ゴロゴロのどを鳴らし、丸まった黒猫のラウル。起こされたのは僕の方だぞ。ふん。
ベッドから起きて、窓辺に立った。カーテンを開け、窓を開けた。
うー、さむ。
すぐに窓を閉めた。
もう秋なんだ、すぐそばにある、チェリーの木は黄色く風に耐えきれない葉っぱは落ち始めていた。
家の周りの木々は赤や、黄色、緑ときれいな色だ。
でも収穫祭は二カ月先だ。
ハ~、僕も早く魔法使いになりたいな。
ぴゅーと冷たい風が隙間から入ってきた。
「んー寒い」
寒かったら起きろよな。
もぞもぞと布団の中に入って行っちゃった。もう。
着替えをしなきゃ。
もう一人で着替えができるもん。
薄いシャツをかぶって、その上にワイシャツを羽織る。ボタンは下からかける。
よし、よくできた。
ズボンをはき、サスペンダーをパチン。
靴下―、あーあ、また穴あいちゃったな。
ママ、じゃないや奥さんは、体が大きくなるんだから気にしないのと言ってくれたけど、今、いないしなー。
クローゼットから穴の開いていない靴下の片方だけ出してはいた。
色が違うけど、見えないからいいや。
靴を履いて部屋を出た。
トイレ、トイレ!
フー、落ち着いた。
歯を磨きながら外を見た。
洗濯物は、外に干してもよさそうだな。
ガラガラペッ!
終わり、カップに歯ブラシを入れるとカランカランといい音。
歯ブラシは三本、もう少ししたら一本増えるんだー、フフフ、いつかなー、楽しみ。
顔を洗い、タオルで拭いて、こうしておけば乾いて明日も使える。
パンと広げてかけておいた。
洗濯物が洗われて絞ってかごに入っている。
洗うのは僕だけど、力がないからいつもぼたぼたと水が落ちる、だから仕上げは師匠に任せる。
ずるずると外へ引っ張っていくかご。
重―い。
師匠と僕の分だけだけど、二日分だから結構ある―。んーっしょ。
外にある、もの干し場。ここに置いておけばいい、僕にはまだ届かないし、イスに上って落ちたこともあるからここまで。後は師匠にお願いしよう。
奥さんは今赤ちゃんができたんだ、もうすぐ生まれるんだよ、だから今は病院にいて、留守なんだー。
「わー、綺麗、もうすぐ咲くね」
青い花がつぼみになっていた。師匠と育てているブルーム―ンという花、こっちは菊という遠い国の食べられる花。黄色や紫、こっちも固いつぼみだ。
「ちょっと待っててね、お水をあげるからね」
水まきは僕の日課だ。
花たちがしゃんと上を見た。
元気、元気、さてと、お師匠様をおこしに行かなきゃ。
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