渚から教えられた

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 要から資料を受けとった智志は、現地解散をしてここは自分が持つからと会計を済ませる。  要は、礼を述べると奏にメールで議員に会って話した事を伝えた。  すぐには周りは(特に大人は)、自分たちがしてきている地球に優しい環境作りをしようと動き出さない。  議員は、自分は少なくともこの問題解決方法を見出だす努力はしていると言っていた。  要から資料を預かって、久しぶりに自宅の書斎で目を通している。  池の底に近いところまで、住みにくさが続くのでどうにかして人間に、自分たちがしてきた事を反省してもらうべく人間にふんして生活を送りながら、様子を見させて貰ったという内容になっている。 「人間ではない生き物が、まさか……。小説などの架空の世界ならともかく、この現実世界でそれはありえない。だけど……最後には、だいぶ住みやすさが戻って来たからしばらく安心して水の中で生きていける。これほどまで長く生きてきた私だが、寿命がもう少し延びそうだ。これも、立花奏という少年に会ったからだ。彼が本気で私たち生き物に微かな希望をもたらせてくれた。100年以上も生きてきた甲斐があった。アマビエという正体を隠して彼と過ごした時間は、忘れはしない。人間は、自分たちの生きやすさばかり求めた結果、二酸化炭素を増やしたり、海洋ゴミを増やしたり、自然崩壊ばかりだ。熊がひもじい思いをして生きていくために、やむを得ず人里に下りていくしかないという現実を、先送りしてただ人間に危害を与えるからと撃ち殺す。共存しようと口先ばかりだ。だが、奏という少年を中心に、もっと未成年者が声を上げて行動して、若者から変わっていって貰いたいと願う。かなり地球規模で考えて貰わないと、都市消滅というのが現実味帯びてきている。人間は、真摯にこういう現実を受け入れて、自分の先祖たちの尻拭いを死ぬ気でやって貰いたいと切に願う。100年毎に、ウイルス感染していくと、私たちアマビエなどの妖怪頼みが出来なくなると思って貰わないと困る。長くなったが、私の考え等は、立花奏を初めとする若者にまずは浸透していけばと思っている。長い文章を読んでくれてありがとう……か」   パタンと資料を閉じて智志は、苦笑いを零した。  アマビエさん、人間にいろいろ気付かせてくれてありがとう。  
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