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何か見えた
立花奏は、学校帰りにいつもの通学路を通って小さな池のある公園を横切ろうとした。
その時、おのれの目を疑うような光景が広がっていた。
白昼堂々と幽霊でも出るの?
奏は、目を凝らして見てみようと近づいたら、そこには人魚というにはほど遠いオビレが3つつけた生き物がいたのだ。
「ひぃっ」
小さく息を飲み、声にならない悲鳴を上げながら全力疾走をして家まで帰った。
幽霊などの類が苦手な奏は、悪霊退散! 悪霊退散! と心で叫びながら両手を合わせてお祈りのポーズをした。
何分、そうしていたかは覚えていないが、気が済むまでやっていたら母親が部屋のドアを開けて、何しているの? ご飯できたんだけどと冷ややかな視線を送ると階段を降りていった。
学校から帰って来て私服に着替えないで制服姿でお祈りをしていたら、そりゃ家族に怪しまれるに決まっている。
奏は小さくため息をつくと急いで私服に着替えて階段を駆け下りていった。
「あのね、母さん」
「何? あんたのさっきの変なポーズってなんなの?」
「えーと、これからそれに関する事話すよ。小さな池がある公園を知っているだろ。そこに、伝説の生き物が出てくるって知っていた?」
「かっぱでも出たの? それにしても、お前はビビリだね。何かを見間違えたんだよ、きっと。今どき、かっぱだのなんだの妖怪が出るわけないでしょ」
「ははは、そうだよね。でも、幻覚だとしてもすごい不気味なのが出てさ。呪われないようにって祈ってた姿見られちゃったけど」
いいから食べなとうながされた奏は、これ以上話題にする気もないので食べ始めた。
大人たちというのは、親も含めて子どもが目撃した不可思議な現象を笑い飛ばすところがある。
奏の母親もそんな一人だ。
非現実的な事は信じないのだ。
もちろん、奏だって普段は非現実的な事は信じないけれど、見えてしまったのだからどうしようもない。
寝る前にはきちんとトイレへ行っておこう。
ご飯を食べると宿題はないのでいつものように、お笑い芸人が出ている番組を見て母親と一緒に笑って過ごした。
その間は、すっかりあの不気味な風景の事なんて忘れていた。
奏が、寝るためにトイレへ行ったら、父親が遅くまで仕事をしてきて帰ってきたところだった。
「母さん、あそこの池に不思議な生き物が出ているんだな。それとも、父さんが疲れて変な幻覚見ただけかもしれないけど」
「あら、奏も同じ事言っていたよ。たぶん、お父さんも幻を見たのよ。疲れたでしょ。お風呂でも入ってきたら?」
そんな夫婦の会話を聞きながら、奏はトイレから出ると父親に挨拶をして部屋へ行った。
(どうしよう。父さんも見たんだ。やっぱり見えるんだ)
忘れていたのに、なんていうタイミングで話を聞いてしまったのだろう。
奏は、スマートフォンで猫などの動画再生で癒されてから眠りにつくことにした。
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