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叫びたいのに、気道は完全にふさがれている。
涙と鼻水が自然と流れ出して来た。
このままじゃ、死ぬ……!
あたしは握りしめていたナイフを美世の手に突き刺した。
親指の付け根を切り裂いたようで、不意に美世の力が抜けた。
そのまま落下するあたしの体。
美世の親指が床に転がった。
激しくせき込み、空気を吸い込む。
でも、のんびりしている時間はなかった。
美世はあたしへ向けて牙をむく。
「あああああああああ!!」
あたしは雄たけびを上げながら、その口めがけてナイフを突き出した。
喉の奥にナイフを突き立てる。
美世の動きが一瞬止まった。
その隙にナイフを引き抜き、そして美世の右目に付きたてた。
美世の眼球がナイフにくっついて飛び出して来た。
血しぶきで周囲が真っ赤に染まる。
それでもあたしは止めなかった。
叫び声をあげてナイフを美世へ突き立てる。
気が付けば美世は倒れ、あたしはその上に馬乗りになっていた。
「あぁぁぁ……!」
涙と鼻水で美世の顔が見えなくなる。
美世は全くの無抵抗だった。
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