突然の

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突然の

本屋のアルバイトが終るのは閉店時間と同じ、夜の8時頃だった。 学校が終わって夕方4時半から出勤、8時退社。 週に3回。 曜日も決まっている。 あたしはまだ残っている社員さんに挨拶をして、従業員入口から外へ出た。 11月に入ってから急激に気温が下がってきていた。 外に出た瞬間、あたしは薄手のコートの首元を閉めた。 夜にもなると12月並の寒さが体を覆い尽くす。 今年の冬は寒波が訪れると天気予報で言っていたのを思い出す。 家までは徒歩5分。 とても近いけれど、街灯の少ない裏路地を歩かなければならなかった。 夜8時といえどあたりは真っ暗だ。 あたしはスマホを取り出し、歩道を照らしながら歩き出した。 「お腹空いたなぁ」 学校が終わってすぐにバイトに入るため、お昼から何も食べていない。 足は自然と早くなっていく。 もう少し。 あと少しで家が見えてくる。 そう思い、スマホの明かりを消した。 その瞬間だった。 不意に音もなく黒塗りの車があたしの真横に停車したのだ。 思わず歩調を緩めてしまう。 一体誰?
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