未来をさがして

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 *  気がつくと病院の白い天井が見えた。  ちょうど麻酔が切れたところなんだろう、全身が痛くて仕方ない。  どうやらはねられてアスファルトに打ちつけたらしい。鏡がないので、状況が判断できないが、たぶんミイラ男のような姿になっているんだろう。   幸い足に痛みがないので、思ったより軽傷のようだ。   ベッドの隣に心配そうな妻の顔があった。  入院の手続きを済ましてきたところなのか、A4の茶封筒を抱えている。  ああ、面目ない。  右腕の思いがけない言葉で怒りに我を失い、とんでもないことになってしまった。  どう詫びればいいのかわからない。  それでもおれは、なんとか「すまない、また心配をかけてしまったね」と、かすれ声をあげた。  それで精いっぱいだ。  本当は頭を下げたかったが、首もやられたらしくギブスがはめられていた。  ところが意外なことにちっとも彼女は声を荒げたりしなかった。  「だから言ったでしょう! 会社をクビになったらどうすんの!」なんて、チクリと責めてやりたいだろうに、それもなし。  つくづく、妻の心の大きさを思い知り、先ほどのおれの行動が恥ずかしい。  委縮していると、彼女は左手にペンを握らせた。  「あなた、もし、悪いことをしたと思うなら、これにサインしてちょうだい」  (まさか離婚届!)と、背筋が震えたが、そうじゃなかった。  彼女が茶封筒から出したのはクローンの培養承諾書だ。  妻は声をはずませて、おれにこう言った。  「わたしたち、また男の子を授かるのよ、それも今度は双子よ!」  「え?」  その意味を察するのに、数秒が必要だった。                          了
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