1、出会い

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ゾワッと背中から鳥肌が立った。 誰かが私の腰から下に接触している。 お上品に接触って言ってみたものの、要はチカンに現在進行系であっていた。 満員電車の中、ドアとチカン者に挟まれ身動き出来ず。 かといって、声を上げるのも躊躇われる。 洋服の上から尻を撫で回されるくらい、仕方ないと諦めるのが、一番面倒がなく、平穏に過ぎる方法だと思ってしまう。 少し前にチカンにあった。 勇気をふり絞り、チカンの手首を捕まえたまま、ホームに引き摺り下ろした瞬間、チカンはダッシュで逃亡。 仕方なく駅員に話をしたけど、犯人がいない為、膠着状態になった。 現行犯逮捕が出来なければ、チカンを捕まえるのが難しいらしい。 そして朝のラッシュ時にチカン騒動は、駅員にも私達にもリスクが高い。 結局、警察官が来て長々調書をとられ、仕事にはもちろん遅刻。 上司には暴言を吐かれ……、殴りたくなる衝動にかられた。 上司曰く、三十路過ぎた女はチカンの被害者にはならないらしい。 ましてや四十路目前の私は、触ってもらってありがとう。とすら思わなければならないらしい。 うん、マジでセクハラだし、上司を訴えてる事も考えた。 でも、今の仕事が好きだし、上司以外は良い人が多いし。 実際問題として、私が遅刻した事により、周りに迷惑をかけてしまったのは事実。 チカンは容認出来ないけど、諸々考えれば、黙っているのが最善策だと思った。 幸い次の駅はこちらのドアが開く。開いた瞬間逃げれば良い。 早く次の駅につかないかな。 窓の外に意識を向ける。
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