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 『結城(ゆうき)さん』のデスクに置いてある卓上カレンダーには、唯一赤丸がしてある日付がある。雨の多い六月に入り五月のカレンダーが一枚めくられたその日から、その赤丸は女性社員たちの目に留まることとなった。早速聞き出したお局様の情報によると、その日は彼の《結婚記念日》なんだそうだ。  『結城さん』は現在31歳で、本名は結城柊星(ゆうきしゅうせい)という。新卒でこの会社に入社してから営業として成績を伸ばし、直属の上司に気に入られて広告宣伝部へ異動。CMや広告に関する華やかな世界に携わり、しばらくすると自ら希望してIT事業部へ参戦し、ここでも斬新なアイデアを練り出して社内表彰を得た。その後も海外事業部から声がかかり数年間海外生活を送っていたが、やはり日本で働く方が性に合っているという理由で一年半前に帰国し、今は経営企画部の部長を担っている。31歳の若さで部長を任されることになったのは彼が初だそうだ。  高身長、高学歴、おまけに昔は読者モデルをしていた程のスタイルと顔面を持つ結城さんはとにかくモテた。入社してすぐから、彼が歩く道には鼻血を出して倒れる女性社員が続出、二月十四日(バレンタインデー)には彼のいるフロアには入室規制がかけられるなど、数々の伝説を残してきた。
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