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 結城さんが資料室の扉を開き、私を招き入れた。ここには業務の参考資料や社内データなどが段ボール箱に入って過去十年分は保管されている。  カチャ、という音がして結城さんが後ろ手に鍵を閉めたのがわかった。 「あ、あの……結城、さん?」  結城さんは俯いたままため息をつき、徐々に顔を上げると私に熱っぽい瞳を向けた。 「ダメだ、紺野さんが可愛すぎて我慢できなかった」 「へっ!?か、可愛い?さっきのどこにそんな要素が!?」  妄想している時の顔だろうか。そんな、まさか。  ……うーん、あり得るかも。というか、多分おそらくそこですね。結城さんの趣味は変わってますからね。 「紺野さん……」 「!」  結城さんが一歩近付き、私は一歩後退した。さらに一歩近付き後退すると、さすが狭い資料室の中、私の背中はすぐに後ろの壁に当たった。 「どうして逃げるの?……美緒(みお)ちゃん」 「し……っ、下の名前で呼ばないでください……!」 「美緒ちゃん、さっき葛城にタイプって言われてたね。二人はそういう仲なの?」 「なっ!?そんなわけないじゃないですか!私は結城さんだけ……」  ハッとして口を手で覆った。  私のバカ……余計なことを言った! 「俺だけ……好き?」  ーーーほら、結城さんが恍惚とした表情になってしまった!
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