29人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
結城さんが資料室の扉を開き、私を招き入れた。ここには業務の参考資料や社内データなどが段ボール箱に入って過去十年分は保管されている。
カチャ、という音がして結城さんが後ろ手に鍵を閉めたのがわかった。
「あ、あの……結城、さん?」
結城さんは俯いたままため息をつき、徐々に顔を上げると私に熱っぽい瞳を向けた。
「ダメだ、紺野さんが可愛すぎて我慢できなかった」
「へっ!?か、可愛い?さっきのどこにそんな要素が!?」
妄想している時の顔だろうか。そんな、まさか。
……うーん、あり得るかも。というか、多分おそらくそこですね。結城さんの趣味は変わってますからね。
「紺野さん……」
「!」
結城さんが一歩近付き、私は一歩後退した。さらに一歩近付き後退すると、さすが狭い資料室の中、私の背中はすぐに後ろの壁に当たった。
「どうして逃げるの?……美緒ちゃん」
「し……っ、下の名前で呼ばないでください……!」
「美緒ちゃん、さっき葛城にタイプって言われてたね。二人はそういう仲なの?」
「なっ!?そんなわけないじゃないですか!私は結城さんだけ……」
ハッとして口を手で覆った。
私のバカ……余計なことを言った!
「俺だけ……好き?」
ーーーほら、結城さんが恍惚とした表情になってしまった!
最初のコメントを投稿しよう!