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結城さんの顔が近付き……さっきとは違う、本当のキスをされた。心は拒みたいけれど身体が拒めない。
顔が離れると結城さんは優しく微笑んだ。か、格好いい……。
「会社で……こういうことは、やめてください……」
「会社でなければいいの?」
「そういうことじゃなくて……っ、私、もう戻ります……!」
動こうとした私の腕を、結城さんは力強く握った。
「美緒ちゃんは、俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃないですけど!でもまだやらなきゃいけない仕事が残ってて、今日は私早く帰らなきゃいけないんです!」
「ーーーどうして?」
「ど、どうして、って……」
言葉に詰まり、なんだか泣きそうになった。
「それより、結城さんこそまだ帰らなくていいんですか?こんなところにいていいんですか?
……結城さん。今日が何の日か……ご存知ですか?」
「……今日?」
シラを切るつもりだろうか。それとも、本当に忘れてしまっているのだろうか。
「ーーーもう、いいです……っ!!」
私って何だろう。
私は結城さんにとって、何なんだろう。
結城さんの制止する声を振り切り、私は資料室を出て自分のデスクへと戻った。
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