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 今日は最悪な日だ。いや、本来なら最高の一日になるはずで、朝からリーマンケンカップルの妄想をしたり、その後の一日のプランを練りに練っていたのに……。あんなに楽しみにしていたBL本は駅前の本屋には置いておらず、二駅先の本屋はいつの間にか潰れていた。本以外のものを買おうと入った店では目当ての物がことごとく売り切れ……。  そりゃあ家に帰る足取りも重くなりますよ。会議用資料作りに想像以上に手こずって、周りを見たら外は暗くフロアにはもうほとんど人がいなかった。しかも、私に資料作りを頼んだ葛城(ちょうほんにん)さんが、結城さんを飲みに誘ってあっさり帰ってしまったし。  あり得ない。仮にも上司である課長のあなたがなぜ帰る!?  ……いや。一番あり得ないのは結城さんだ。  今日は《結婚記念日》なんですよね?それも初めての。カレンダーに赤丸するほど大切な日なんじゃなかったんですか!?  マンションのエレベーターの五階のボタンを押して、心の中で悪態をついた。  あぁもう、本当の本当に最悪。仕事も、プライベートも、全て放り投げてどこかに消えてしまいたい。  こんなことなら……こんなに悲しい気持ちになるくらいなら、一年前のあの日、私は彼を受け入れるべきじゃなかったんだ。  
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