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 結城さんは優しいのでこんな私を気持ち悪がったりはしなかった。むしろ楽しそうに、「紺野さんって見た目とギャップがあってすごく面白い人なんだね」と気に入られてしまった。  ええそうです。どちらかと言うと真面目系の外見ですが、一旦妄想が始まると自分でも止められないくらい変な女になるんです。  よく引かずにいてくれるなぁ。それはそれで結城さんも変わった人ですよね。  ちらっと見上げると、結城さんはイケメン顔で私を見つめていた。 「たまらないなぁ、もう本当、紺野さん面白すぎるね……。俺の好みドンピシャだよ」 「!」  私をギュッと抱き締め、耳元で「また後でね」と囁いた。  ーーー声!声も良すぎるんです!  でも取り乱さない。妄想以外では、努めて冷静にいるのが私のモットーだから。    ……っていうか、また後でってどう言う意味ですか、結城さん。  階段を降りて去って行く結城さんの左手薬指には、結婚指輪が光っている。一年前の今日から外すことなく毎日付けているイニシャルの入った指輪。  対して私の左手薬指には絆創膏が貼ってある。……朝、コーヒーを淹れようとして火傷してしまった勲章なのだ。  
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