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ーーー夕方。定時の午後五時を過ぎて少しずつ人が減って行く中、私は手持ちの仕事が終わらずにデスクにかじりついていた。
あぁどうしよう……!今日は早く帰ってやらなきゃいけないことがたくさんあるのに!まずは駅前の本屋に寄って、最新刊『隣のアイツに弱みを握られましたが何か?』を買わなきゃ!私の大好きなリーマンケンカップルの設定で、大好きな作家さんのBLコミックなんだから。それから、二駅先のあの店に寄って、その後はまた別のあの店に寄って……家に着いたらそれこそあれやこれやと大忙しなのに。どうしてこんな日に限って明日の会議の資料作りなんて急に頼んでくるのよ……課長のバカーっ!
恨み辛みを言っても仕事は終わらない。大きなため息をついてから、気持ちを落ち着かせるために休憩コーナーへ珈琲を汲みに行くことにした。
気分転換した後は一気に仕事をやっつけて、絶対に一時間後には会社を出るんだ……!
休憩コーナーへ足を踏み入れると、先客が二人いた。
一人は結城さん、もう一人は結城さんの同期の葛城さんだった。葛城さんは私が所属する顧客管理部の課長で、まさに私が残業する羽目になった諸悪の根源だ。
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