2

2/6
前へ
/15ページ
次へ
 最初に私に気付いたのは葛城さんだった。結城さんの爽やかでスマートな印象とは違い、どちらかというとスポーツマンタイプの俺様気質の人間だ。白いワイシャツを腕まくりして、普段は胸元のポケットに挿しているペンを右手でクルクルと回していた。   「おー紺野。資料作り進んでるか?急に頼んで悪かったけど、前回の会議の議事録がわかりやすくて良かったからぜひ紺野にお願いしたいと思ってね。まぁ無理そうならこいつにやらせるけど」  葛城さんは、冗談ぽくそう言って結城さんの頭をこづいた。結城さんは少し顔をしかめて呆れ顔をする。 「いや、俺、部署違うから」  さすが同期。みんなの王子様結城さんにこんな態度をとれるのは葛城さんくらいしかいないんじゃなかろうか。  葛城さんと結城さんは、二人で『ツーキャッスル』と呼ばれていて、現在では社内の人気を二分している。入社当初、二人は営業部に配属されていて営業成績一位と二位を争っていたそうだ。その後も何かと競り合うことが多く、お互いにライバル視しているところがあると聞く。  二人とも珈琲を飲みながら雑談でもしていたようだ。  私はにっこり微笑んだ。 「大丈夫です。葛城さんからいただいた資料分かり易かったんで、思ったより早く出来ると思います」  ……本当は全然大丈夫じゃないですけどね!  でも目上の人には逆らわない。だって私は常識人ですから。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加