ちょっといいかしら?

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ちょっといいかしら?

 唯が転校してきてから1ヶ月が経過した。数日もすると案の定、彼女の悩みに反して、上級生、下級生に限らず、学校内の男子達からの、猛烈なアタックが繰り広げられていた。  その数は僅か一月で軽く100人は越えている。単純に毎日、3・4人に告白されていた事になる。しかし、唯は決して首を縦に振ることはなく。彼女の後ろには、恋に敗れた無数の屍が転がっていた。 「ふん!可愛げの無い女ね……」女子生徒達が教室の隅で唯の話をしている。どうやら、彼女の存在が疎ましいようである。唯のせいで意中の男子にフラれた女子もいるようであった。 「ちょっと、男山君……いいかしら?」誠が昼休みの憩いの時間、机にうつ伏せになっていたら女子の声が聞こえた。 「あっ……、僕?」突然、唯に声をかけられて誠は驚く。 「あなた以外、誰もいないでしょ」彼女のその言葉を聞いて辺りを見回すが確かに誰もいない。 「なに?」誠は軽く背伸びをしてから、口に手を当てて、欠伸をした。 「あの……、いえ、放課後にちょっといいかしら?」唯は何かを言おうとするが、女子達の視線を感じて、その言葉を飲み込んだ。 「ああ、別に僕は帰宅部だから、いいけど……。今じゃ駄目なのか?」訳が解らなかったが断る理由も無かった。 「うーん、やっぱり人があまり居ないところのほうが……、いいかな……。」少し恥ずかしげな、表情を見せながら唯は上目遣いで誠を見た。 「ああ、解った……。」 「じゃあ、学校が終わったら校門で待ってるからね。絶対よ」そういい残すと笑顔で手を振りながら教室から姿を消した。 「お、おい、まさか愛の告白か!?」近くで聞いていた芦屋は驚きの表情を見せる。 「まさか……、僕は女に興味ねえし……」誠はため息をつく。 「えっ!?」芦屋はわざとらしく自分の胸を隠す。 「ばーか、そんなんじゃねえよ」誠は呆れる。 「でも、お前って、そんなに綺麗な顔をしてるのに、本当にもったいないな。引く手あまただろうに」芦屋は誠の前髪を手で上げようとする。 「やめろよ!」誠は少し切れ気味で、芦屋の手を払った。 「なっ、なんだよ、そんなに怒るなよ!」誠の反応に、芦屋は驚き一歩後ろにたじろいだ。 「なに話してるの?」恵子が教室に戻ってきた。 「いやぁ、誠のやつ、処女塚さんにデート誘われて……」 「な、なんですって!?」芦屋の言葉を遮るように恵子は聞いた。その声のあまりの大きさに教室中の生徒達は驚いたようだ。 「違うよ、デートじゃなくて、ちょっと話があるって言われて……」恵子に知られて少し厄介だと誠は思い、芦屋の顔を睨み付ける。芦屋は頭に腕を組んで鳴らない口笛を吹いた。 「話って……、まさか告白!?」恵子の言葉に生徒達がざわめく。 「だから違うっていうのに!僕はそういうの興味無いから!!」誠は机を叩いて嫌悪感を露にする。 「えっ…………、興味無い……の?」恵子の目が見開いている。 「あ、ああ……」誠は誤魔化すように目を反らした。 「そ、そうなんだ……」恵子の感情を誠は理解する事が出来なかった。
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