3人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
この部屋の窓をそっと開け、旦那だけに聞こえるように喋る。近所の面々は、奥方が入院したことを未だ知らないだろうから、僕が奥方の声を真似したとしても誰も不審には思わないだろう。なにせ、この窓から隣の窓まで二メートル余り、大声を出すわけでもないし、なんの問題があろうか。婆さんも寝たようだし。
「あなた、お母さまも、わたしたちの結婚に反対したんですか?どうなのよ?記憶にないの? 」
「・・・・・・・・・・・・・」
なぜ黙っているんだ。返事しろよ。
「それは記憶にないと言っただろう」
返事だ。いつもと同じトーンだ。安心した。続けよう。
「そんなことはないでしょう、あなた」
「もういい加減にしろ」
「反対してくれれば、こんな結婚生活はなかったのよ」
「そうだろうな」
「だろうな、ですって?あなたは、わたしのお陰で楽をしてきたのよ。わたしに感謝しなさい」
「ああ、感謝している。感謝しているとも」
あっ、窓が開いた。ヤバい。
最初のコメントを投稿しよう!