騙し婚 mimic

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 この部屋の窓をそっと開け、旦那だけに聞こえるように喋る。近所の面々は、奥方が入院したことを未だ知らないだろうから、僕が奥方の声を真似したとしても誰も不審には思わないだろう。なにせ、この窓から隣の窓まで二メートル余り、大声を出すわけでもないし、なんの問題があろうか。婆さんも寝たようだし。 「あなた、お母さまも、わたしたちの結婚に反対したんですか?どうなのよ?記憶にないの? 」 「・・・・・・・・・・・・・」  なぜ黙っているんだ。返事しろよ。 「それは記憶にないと言っただろう」  返事だ。いつもと同じトーンだ。安心した。続けよう。 「そんなことはないでしょう、あなた」 「もういい加減にしろ」 「反対してくれれば、こんな結婚生活はなかったのよ」 「そうだろうな」 「だろうな、ですって?あなたは、わたしのお陰で楽をしてきたのよ。わたしに感謝しなさい」 「ああ、感謝している。感謝しているとも」  あっ、窓が開いた。ヤバい。  
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