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「君、夜遅くに、ご苦労さん。僕を慰めているつもりなのか?」
あっ、ウインクした。冗談だろう。
「君は実にヒューマンな奴だな。ご免な、いつも情けない夫婦喧嘩を聞いて頂いて。これからは君が妻の代わりをしてくれるというのか?でも、そんなことは止しなさい。僕は新しい生活を始めようと思っているんだ。失敗した結婚生活を反省材料にしてな。君は未婚のようだが、僕と同じ轍を踏むんじゃないよ。いいか、断じて見栄を張るなよ。素直のままで女性に当たるんだ。それで駄目ならそれで良いんだ。始めから縁がなかったということだ」
「はっはっ、はい、わかりました。旦那様、夜分失礼しました」
「ちょっと、裕二ちゃん、大きな声で、旦那様だなんて、誰と話しているのかの。一人で寝てはいないのかの?」
「うちの婆さまが気づいたようです。窓を閉めます。これからも結婚についてアドバイスしてください」
「なんのなんの、僕でよろしければ…」
おかしい。隣の旦那は離婚したのか?
「お婆さん、なんでもないよ。夢に魘されていたみたい。ほら、いつも夜になると聞こえてくるお隣の夫婦喧嘩だよ。その夢を見ていたんだ。お婆さんも毎晩聞いているでしょう?」
「お隣の夫婦喧嘩じゃと?いいや、聞いたことがないの。年寄りは早寝なんじゃ、夜の9時には寝ているからかもしれんが、どんなものか一度聞いてみたかったの。まあ、夫婦喧嘩は犬も食わんからどうでも良いがの」
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