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序章
まだ肌寒い春の日。
永山巡の葬儀の参列者は、ひどく少なかった。
親や親戚とは縁が切れていたそうだ。送ったのは友人と思われる数人のグループ、かつての仕事先の同僚、最後に看取った主治医と看護師。
そして喪主は、十年前に養子縁組みをしたという「息子」の永山優士郎だった。
優士郎に残されたのは、古い家と家財道具、わずかな貯金と、巡を送る権利だった。
永山 巡、享年六十二。
優士郎は、五十二歳だった。
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