序章

1/1
175人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ

序章

まだ肌寒い春の日。 永山(ながやま)(めぐる)の葬儀の参列者は、ひどく少なかった。 親や親戚とは縁が切れていたそうだ。送ったのは友人と思われる数人のグループ、かつての仕事先の同僚、最後に看取った主治医と看護師。 そして喪主は、十年前に養子縁組みをしたという「息子」の永山(ながやま)優士郎(ゆうしろう)だった。 優士郎に残されたのは、古い家と家財道具、わずかな貯金と、巡を送る権利だった。 永山 巡、享年六十二。 優士郎は、五十二歳だった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!