1.砂の下で

1/10
前へ
/176ページ
次へ

1.砂の下で

「暑い、そして何もない、そろそろ町が見えてきてもいい頃なんだけどな…………」  旅の途中、私たちは砂漠で道に迷っている。道中出会ったおじさんに道を教えてもらい、その通りに歩いてきたはず。けれど、どれだけ歩いても目的地である町が見つからないのだ。トボトボ歩く私は、サリーだ。  体力は底を尽きそう。  普段使っている大きな鍋、やかんにフライパン、沢山の調味料。私の仕事道具を相棒のアズールに乗せて歩く。  アズールとは旅を共にするベンガルトラで、年は私と同じくらいだろう。 「アズール、大好物のスイカあげられなくてごめんね」    アズールは大丈夫だよと言うように、グルグルと喉を鳴らした。終わりなき砂漠をとぼとぼと歩いていると、いきなりアズールが向こうの空を見て唸り声を上げた。 「どうしたの。大丈夫?」  アズールの視線の先には巨大な竜巻が……渦を巻いて私たちの方へ向かってきている。    砂埃が砂漠一体を覆い尽くし、視界は塞がってしまった。 「わっ! 飛ばされる」  サリーはアズールに必死にしがみついた。 「一体この風はなんなの……ハムシーンにしては強すぎるし」  アズールにくくりつけていた大きな鍋が飛んでいった。 「あっ私の大事な道具が!」  手を伸ばして取ろうとした矢先、アズールに押さえ込まれた。 「サリー、危ないよ!!」 (えっ今のアズールの声?)  アズールの声に驚いていると、トラは私を自身のお腹の下に隠し、包み込むようにして丸まった。 (飛ばされないように守ってくれているのね……) 「ありがとう、アズール」  私はただ願うしかなかった。    砂嵐が早く収まることを……
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加