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訳あって途切れ途切れの記憶を呼び起こす。
もう五年前になるだろうか…………
「サリー、あなたは頭がいいから、この町の状況もう分かっているでしょ?? このまま町ににいたら確実に死んでしまう。お母さんも、もう長くないわ。早く出なさい」
ベットで横になる母を私はそばで見守っていると、いきなりそんなことを言うもんだから驚いた。
「え?? お母さん何言ってるの??」
昨日二十歳の誕生日を迎えた私。大人の仲間入りをした私に母から辛い贈り物が届いたんだった。
「出て行くなら今日の夜よ。明日には国境が封鎖される、規制が厳しくなるから。裏口から出なさい、そして閉ざされた坑道を通って青い森に向かいなさい。あそこにあなたを守ってくれる子がいるから」
「嫌だって言ってもお母さんは、行けって言うんでしょ」
「ええ。サリーはよく分かっているわね」
ーーーーーー
「あのときの私は薄々気づいていたのよ。流行り病はかかったら最後、治る見込みはないことを。毎日誰かが死んでいくんだよ?? 辛すぎるよね」
久しぶりに昔を思い出したら、なぜか涙が出そうになって右手を強く握った。
「サリー、辛いだろ、もういいよ…………」
気づいたらカターシャは私の隣に座っていた。
触れるか触れないか……そんな距離に。
ーーーーーー
母が眠ったころ、私は着替えをリュックに詰め、家を出る準備をした。荷物は大してない。自分もそのうち死ぬんだからと思っていたからね。
荷物をの準備もでき、家を出ようと麻の羽織を取った時、ヒラヒラと紙切れが落ちてきた。よく見てみるとそこには…………
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