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道中はとくに会話もなく、空からくる暑い太陽の音が鳴り響いた。時折カターシャと長身の男が何やら会話をするくらい。
そろそろ当たりが暗くなる頃。
「今夜はここで朝まで休むことにしよう」
「そうですね」
カターシャは歩みを止め、長身の男は荷物を下ろし始めた。
「グーーーー」
沈黙が流れる中、サリーのお腹が大きな音を立てた。
「そうだったな、サリーたちは何も食べてないんだったな」
「大丈夫です一晩くらい」
「そう言わず、とりあえずこれだ」
そういって麻の袋から出してきたものは、なんと鶏の生肉だった。
「火はないし、フライパンも…………」
サリーたちが持っていたフライパンは砂嵐で飛ばされてしまっているから調理器具は何もない。道具がないと何もできないなんて悲しいものだ。
「こちらをお使いください」
長身の男が出してきたのは年季の入った小さなフライパンと、木の枝。そして芋みたいな野菜だ。
(作れないことはなさそうね。まぁあとは火があればってところか)
サリーはフライパンの上で持っていたナイフを使いお肉と野菜を切り分け、カターシャに見つけてもらったスパイスで味をつけた。
「あとは火ね…………」
「サリー、木をここにまとめて」
カターシャが言った。
「分かった…………」
木の枝を組み立てると、カターシャが手をかざした。
(一体何が始まるの??)
すると、なんということだ。手をかざした木から火が出たのだ。火は勢いよく燃え出す。
「すごい!! カターシャ魔法使いなの??」
「いや。ただの術だ」
(魔法……か。なんだろう魔法という言葉に何か引っかかるものがあるんだけど……なんだっけ。思い出そうにも思い出せないや)
カターシャの術を見た長身の男は近くから木を拾ってきて、焼べた。
「カターシャ様、火の使い方が安定してきましたね」
「まだまだだ。調節するのは難しい」
「あなたたちは一体何者??」
「いいから早く焼け。腹が減った」
「はいはい」
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