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1.砂の下で
「暑い、そして何もない、そろそろ町が見えてきてもいい頃なんだけどな…………」
旅の途中、私たちは砂漠で道に迷っている。道中出会ったおじさんに道を教えてもらい、その通りに歩いてきたはず。けれど、どれだけ歩いても目的地である町が見つからないのだ。トボトボ歩く私は、サリーだ。
体力は底を尽きそう。
普段使っている大きな鍋、やかんにフライパン、沢山の調味料。私の仕事道具を相棒のアズールに乗せて歩く。
アズールとは旅を共にするベンガルトラで、年は私と同じくらいだろう。
「アズール、大好物のスイカあげられなくてごめんね」
アズールは大丈夫だよと言うように、グルグルと喉を鳴らした。終わりなき砂漠をとぼとぼと歩いていると、いきなりアズールが向こうの空を見て唸り声を上げた。
「どうしたの。大丈夫?」
アズールの視線の先には巨大な竜巻が……渦を巻いて私たちの方へ向かってきている。
砂埃が砂漠一体を覆い尽くし、視界は塞がってしまった。
「わっ! 飛ばされる」
サリーはアズールに必死にしがみついた。
「一体この風はなんなの……ハムシーンにしては強すぎるし」
アズールにくくりつけていた大きな鍋が飛んでいった。
「あっ私の大事な道具が!」
手を伸ばして取ろうとした矢先、アズールに押さえ込まれた。
「サリー、危ないよ!!」
(えっ今のアズールの声?)
アズールの声に驚いていると、トラは私を自身のお腹の下に隠し、包み込むようにして丸まった。
(飛ばされないように守ってくれているのね……)
「ありがとう、アズール」
私はただ願うしかなかった。
砂嵐が早く収まることを……
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