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第4話 誕生日
2月は佐山の誕生月だ。付き合いだしてから2度めのバースデー。プレゼントは当初の予定通りイニシャル付きのネックレス。もう既に手元にある。
去年もそうだったんだけど、バレンタインも近いのでチョコレートも準備した。
「おー、今日はご馳走だなぁ」
2月に入ってから、レコーディングが始まった。連日サポートメンバーと共にスタジオに籠ってるんだ。
ただ、今日は誕生日だからって訳じゃないけど、ちょうどオフで家にいる。
「最近、ケータリングばかりだし、外食より家飯のほうがいいかなと思って」
「ん? どういうこと?」
あ。やっぱり忘れてる。自分の誕生日なのに。
昨年は、僕も料理なんてしてないから、二人でちょっと贅沢な外食をした。その時も佐山は気が付かなくて。
「今日は何日だ」
「え? 今日は2月……あ。俺の誕生日だった。えへへ、最近日にちとか考えないから」
「最近だけじゃないだ……うぎゅ」
僕が言い終えるまえに、佐山は僕を抱きしめる。逞しい腕と胸に圧迫されてムギュッてなった。
「そうか。俺のために用意してくれたんだ……」
あいつのくせっ毛からシャンプーの良い香りがする。それにうっとりするように肩に顎を預けた。
「誕生日、おめでとう。おまえがこの世に生まれてくれて感謝してるよ」
「倫……」
あいつの腕に力が入る。いや、これマジで締められてる! 逝っちゃうレベルだよっ。
僕が身悶えしたのに気が付いたのか、佐山はふっと力を抜く。そして両手で頬を包み込むと荒々しいキスをお見舞いされた。
「んんっ!」
暴力的が過ぎるあいつの口づけに、それでも僕はときめいて、柔らかい舌を絡ませあった。
料理もプレゼントも佐山は凄く喜んでくれた。
早速ネックレスを付けてみる。クローゼットの鏡の前で二人で並ぶとやっぱり少し恥ずかしいかな。お揃いなんて初めてだ。
「お揃いだけど、首の太さや肌の色が違うから、全く一緒には見えないな。でも、そこが良い」
佐山は僕の後ろから首筋にキスをする。あいつの髪が触れてくすぐったい。少し肩を聳えさすと、あいつは何を思ったのかそのまま熱い抱擁を始めた。
「さ、さやま。何? どうした?」
「ここであんたを抱く」
また突然スイッチ入ったみたい。佐山は背後から器用に僕の服を脱がし始めた。
「あ、また……いきなり……」
すぐそこにベッドがあると言うのに、あいつはクローゼットの中で僕を責めだした。
「う……あ、あん」
僕の首の下でネックレスのトップが揺れている。あいつの動きに合わせてリズミカルに。見上げると、鏡の中のあいつの首もとでも、それは同じように揺れていた。
なんだかそれが可笑しくて、幸せで、満たされた思いのなかで、僕は絶頂に達した。二人、床に崩れるように転がって、もう一度肌を寄せ合う。あいつは少し体を起こし、僕のネックレスにキスをしてくれた。
Happy Birthday 佐山。 今年も一緒に祝えて良かったと思うよ。
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