御神標様

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 人の営みが途絶える真夜中。父の隣で私は寝ていた。  するとどこからともなく、森の中で聴いた鈴の音が私を目覚まさせた。  シャンッ、シャンッ。  それは段々近づいてくる。 「そんな、ちゃんとお祈りしたのに」  私は恐怖で震えが止まらなかった。すぐに御神標様(おみしべさま)と理解できたからだ。  お酒を持って行った私を探してる。きっと連れ去られる、いや殺される、祟りにあう。私は布団に潜り、外を見ないようにした。  しばらくすると聴こえた鈴の音が止んだ。  不思議に思った私は布団の隙間からそっと外を覗くと、窓の外に人影が見えた。 「ひっ!」  小さく悲鳴を上げ、再び布団に潜る。  カチャッ、という音と窓が開く音が聴こえ、さらに恐怖した。  入ってきた!ごめんなさい、おみしべさま。ごめんなさい!  御神標様(おみしべさま)の足音は私と父の周りを周回していた。  するとどこかで足音が消えた。  鋭い緊張で息を呑む。その刹那。 「ぎゃあああああ!痛い!誰やお前っ痛い!うわああああ!!!」  聞いたことないくらい壮絶な父の悲鳴。私は怖くて顔を上げられなかった。  しかし数秒後、途端に父の悲鳴が鳴り止むと部屋はしんとした。  恐るおそる布団から顔を出すと、隣にいたはずの父は跡形もなく消えていた。  父がなぜ、何をされたのかわからず恐怖で言葉が出ない。悲鳴もあげられない。ただ全身を震わせ、その場に座り込んでいると。
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