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御神標様
私は生まれた時から幸せを約束されなかった不幸な子だった。
優しかった母は私を美幸と名付け、幸せになることを願い続けていたが、父がそれを邪魔した。
度重なる母への暴力、暴言。料理が不味いと頭に皿を投げられ、埃が残っていると腹を蹴られ、帰りが遅いと狭い物置へ閉じ込められる。心身共に疲れ切った母、しかしそれでも私の頭をいつも撫でてくれた。
「あぁ、私の子。世界一かわいい私の子。あなただけは幸せになりなさい」
父という恐怖がありながらも、私は母に抱かれることが安らぎになっていたし、母は癒されていたに違いない。
きっといつか、こんな日は終わると信じていた。
でも母は、私が一三歳の時に死んだ。死因は知らない。
母の死を誰よりも悲しんだ私。しかし悲しみに暮れる時間も、父は与えてくれなかった。
「おい、母親が死んだら飯を作るんはお前の番やろ?早く用意せんか!」
その一言から本当の地獄が始まったのだ。
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