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体育の時間、私は長袖のジャージを着て日陰で座っている。先生の許可をもらい、体育だけは見学させてもらっているのだ。
なんだか寂しい感じがする。皆んなが楽しそうに体を動かしているのが羨ましい。そんな気持ちで眺めていた。
そんな私が一人涼んでいる様子を良く思わない人もいた。
「あの子、いっつも楽して単位もらえるからこすいよねー」
「ほんと、先生も甘やかして。調子乗ってるんやない?本当は病気なんてないのかもよ?」
私に聞こえるようにすれ違いざまに不服を漏らす二人組。たしかに病気なんてないけど、それを晒せば痣がバレてしまうから。
「人の気も知らんくせに」
そう小声で呟いた。
私は少し不安になっていた。もしかしたらみんなそんなことを思ってるのではないか。周りのみんなが私を白い目で見て後ろ指を指しているのではないか。
常に他人の視線を気にする私にとって、これ以上の恐怖は父以外に知らない。
体育の時間が終わり教室に帰ったころ、私の席の周りにあの二人組がいた。
「ねぇねぇ、途中まで一緒に帰らん?」
怪しさしか感じられない突然の誘いに、しかしそれをすぐに断る勇気は私にはない。彼女らからは一緒に帰れと強制されてるようにしか思えなかった。
さもないと、何をされるかわからない。でも一緒に帰っても何かされるかもしれない。買い物に行って早く帰ってご飯を作らないと怒られるのに。
「わかったよ」
二人組はその返事を待っていたかのように鞄を背負って身支度を整えた。
「じゃ、帰ろ!」
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