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私の半分の背丈ほどある草をかき分け、鬱蒼とした森の中を進んでいく。近くにあると思ったのだが見つからず、やむを得ずもっと奥へと進んでいった。
それから一時間程過ぎた。辺りが段々と暗くなっているのがわかる。日が沈みかけているのもそうだが、木が生い茂って空を覆っているから日の光が全然届かないのだ。
それに気がついた時、同時にあることに気がついた。
「どっちから来たっけ?」
森の景色は四方八方変わらず、完全に帰路を見失っていたのだ。
「こわいよぉ、ここどこ?」
千円札のことなんか既に忘れ、父の恐怖に初めて勝る恐怖を感じた。暗く道もない凸凹の地面。風が草木を揺らし不気味な音を立てる。
今どこに向かっているかも分からず、ただひたすら涙をこぼしながら森の中を彷徨っていた。
すると、どこからともなく鈴の音が鳴り響いてきた。一定のリズムで鳴る音は近づいたと思ったらすぐに遠ざかって行った。
「人が歩いてる?」
そう直感した私は助けを求めようと鈴の音が鳴る方を追いかけた。近づいてるはずなのに音はまだ遠い。全く追いつくことができず、やがて人影を見ることもなく音は消えてしまった。
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