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近くで鳥の鳴く声がして勝時はハッと意識を引き上げた。 気がつけばもう夕暮れだ。足首を撫でていた波はいつのまにか脛とふくらはぎを行ったり来たりしている。 このまま気付かずにお前が眠る海の中へ行けたら良かったのに……と橙色に染まる沖の方を見つめた。ふるり、と頭を振って海に踵を返して砂浜を歩く。サラサラと小さな砂つぶが濡れた足に張り付き、互いに擦れ合って音もなく落ちていった。 毎年過ごす椰子の木の下へ腰を下ろし、持参した茶瓶を傍らに置くと勝時は細く長く息を吐き出して、背中を木の幹に預けて頭上を仰いだ。 いつかのように浩太が落ちてこないかと、叶いもしない願いを何年経っても捨てられない。
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