仮初めの夜の恋人達

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仮初めの夜の恋人達

旧消滅地球のポイントスネーク。 摩天楼の一角で 月に何度か夜を共にする 冷徹な視線を、持つ男。 特定危険指定組織の若頭だと 知っていて近づいた 馬鹿なわたし。 わたしの見た目は、旧地球の ポイントスネークでは 成人を越えて物憂げに見える らしい。 そもそも 母星での時間軸では 性交はすでに廃れてない。 『アヤカ、お前といると、 まるで、俺は小鳥だな。 いつまでも啄んで止まらない』 『カンジが小鳥なら、わたし 可愛がり過ぎて殺しちゃうね』 さんざん一夜を 睦ながら戯れ言を口に篭絡させる なんて手段は、 只の言い訳 『頬も、掌も、腕も、足でさえ お前は青い薔薇だな。どこも 甘くて寂しい匂いがする。』 貴方はそう言って 抱くけど、 本当はね、母星では わたしは まだ成人前。 旧消滅地球での捜索は 母星貴族に組する子息子女のみに 課せられる特務調査だから。 『じゃあ貴方にとって とるに足りない、その他大勢の 都合のいい一輪なんでしょ?』 そう貴方に拗ねると 『理性なんかとうに 焼き切れてる。理屈じゃない』 そう狡い答えで わざと貴方は シャワーを浴びに行く。 密偵任務は成人すると 終了し、戦闘の最前線任務へと 移行する。 わたしは旧消滅地球での 任務をこなす傍ら 母星では味わえない時間を 過ごした。 何故なら コールドスリープで時間逆行した 旧消滅地球には 空の下、風が吹いている。 太陽の光が降り注ぐ。 夜が明けると朝が来て、 爽やかな大気が わたしを包み込む。 海があって、山があって、 自然の中を鳥が飛ぶ。 その全てが 母星コロニーにはもうない夢。 その復活の鍵が 『ファーストアップル』だという ポイントスネークにおける 一流大学卒業の経歴が 母星の操作で偽造されている わたしは、 時間逆行をしてすぐ 元官僚が立ち上げた、 情報管理企業に入社した。 そこは、 メガデータでも、 世界情報のシンクタンクで、 金額さえ払えば、 希望する情報を提供する。 もしくは、金額に見合った 情報を売る事も可能。 わたしは任務の為、 この仕事を選らび入社した。 情報の岸辺で 集まるデータを入出力しながら、 メガデータの中、 捜索物の行方を探す。 手に入れる為、 危険を冒しながらも 一心不乱で 世界情報の海を泳ぐわたしは その傍ら、 いつの間にか 旧消滅地球の風景を見るのが 好きになっていた。 考えてみれば 無理もないと思う。 摩天楼から見える十五夜月。 眼下に更ける 聖夜のイルミネーション。 カクテルグラデーションの夜明けに染まる桜並木。 眩しい街まで香る潮騒。 母星コロニーには設定される ことのない季節の移り変わり。 盗み見た情報を元に 広域なポイントスネークを 捜索する わたしは 最後、 朝に、 昼間に、 1度貴方と ヒノヒカリを歩きたかった。 シャワーの音を 聞きながら 『夜の帳に紛れてしかカンジに 会えないなんて、まるで貴方に 水だけもらう、花瓶から 動けない華みたいな呪いね。』 と呟いても 若頭の立場で 都合のいい女止まりのわたしに 最後まで無言のまま だと解っている、 旧消滅地球の時間軸の貴方は わたしにとって 幻と同じで、 本当はわたしが貴方にも 写真にならない存在だと 理解していても。 気が付けば 癒された刹那の肌に 手にした思い出のすべてが 悲しみだけじゃ寂しいでしょう? だから 最終任務日前日の月夜に、 細やかな望みを伝えた。 けれど 貴方は変わらず冷徹な瞳で まるで 夜通しの熱を流すように シャワーしたまま 去っていった。 摩天楼の一角であんなに 風を切る鳴き声に 涙を止めなくちゃ。 心が向いている間に、 この疼きを幻に戻して わたしは 結局異邦人で 旧消滅地球の船乗りじゃなくて あなたは幻みたいな 最果ての海の彼方で すでに存在しない人物だと 言い聞かせて コールドスリープから 目覚めたのに。 「どうして、 カンジが、そこに いるの、、」 母星の時間軸に帰還した わたしは、 成人の儀式として 操縦式人型機動兵器 ヒューマノイドアーマーウエポン ハウワ母星艦隊の指揮官を表す エンブレムをつけた 白い人型機動兵器に に搭乗した。 敵の主力人型機動兵器、 アダーマー帝系艦隊の指揮官だけ が乗る 黒の人型機動兵器の 操縦席の人物は 間違いなくカンジ。 その証拠に 両者のアーマードウエポンの 手にするアトミックサーベルが 交わった時、 互いが睨み会う先に カンジが驚愕の顔を見せていて 何かを口走ったのだから。
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