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魔導師フーリオの詠唱音が
鈴を鳴らす様に、
都市地下深くに在る
地域プラント管理室に
木霊すると、
カンジの身体が強い光を発して
彫り物が浮き上がる。
わたし達、
管理室に居る全員が、
閃光の眩しさに手を翳す中
カンジの2本刀と龍の彫り物は
一気に霧散した。
その跡に現れたのは、
まるで
カンジの身体に刻印されたかの、
鮮やかな光を
血潮の如く脈打ち刻む
古代DNA陣だ。
『凄い時代物の陣だね。もしかし
て、この陣で居場所とかも
解っちゃいそうだな。じゃあ、
膜で全部を覆うね。瞬きは、
厳禁でお願いしますよ。じゃ、』
まるで陣その物が、
古代生物かの鼓動を波打たせる
様に、
魔導師フーリオが上げた感嘆の声に賛同しつつも、
わたしは上半身を出すカンジを
耀きの渦に翻弄されながらも
見つめる。
『全裸でなくても大丈夫なのか』
両手を空に差し上げる
魔導師フーリオに
まるで地下世界に投下された
太陽を背負うカンジが、
問い掛けた。
ブウーーーン
フーリオの掌の間に
音を鳴らした
丸い スケルトン状エネルギー膜が
出現して、
わたし達が
一息吸い込むが間に、
新しい光の環を形成しながら
カンジを覆っていく。
『肌を座標に覆いを伝わせるから
全裸じゃなくても大丈夫です』
カンジが2つの光、
言うなれば
太陽と満月の爆光に飲まれるのを、
目を細めてフーリオは、
カンジの懸念に答え、
魔導師らしく
指をパチンと鳴らした。
光がカンジの身体に収束すると、
管理室に爆風が吹き抜け、
わたしは身体をのけ反らす。
星の重力が一気に
カンジの身体を覆った錯覚に
心配になって、
カンジに駆け寄った。
あれだけのエネルギーを肌1つで
カンジは、
受け留めたのだから。
『凄い。カンジ、肌に彫り物も
古代陣も見えないわ。カンジの
肌だけが、見えている!』
そこには
今まで見る事叶わないはずの
無飾なるカンジの背が
佇んでいる。
『一見、陣も消えたみたいに見え
るけど、ちゃんと膜皮膚の下に
あるから、エネルギー発動時に
は浮き上がると思うけど、普段
は見えないから大丈夫だよ。』
魔導師フーリオは造作無い様な
面持ちで、わたしとカンジに
無事、仮想皮膚が覆われたと
告げた。
『パチパチパチパチ』
目前で行われた術式に、
皆が言葉を失う中で、マイケルが
短く拍手を送りながら
魔導師フーリオに問い掛ける。
『さすがに、無償とは言わないん
だろーね?何を考えてるの?』
勿論わたしも、きっと
険しい視線を投げるカンジも
その事は予想している。
『いや、実は未来人さんに、
身体強化の組み換えを皇子に
して貰いたいんですけどね。』
そして魔導師フーリオは、
わたしでさえ何時間か前に知った
帝系人特有の能力という
意外な対価を求めて、
カンジの応えを伺った。
『身体強化って、魔力で出来る
し、魔充石で能力補給もやれる
でしょーが?今更まだ必要?』
マイケルは、
魔導師フーリオの言葉に意外だと
表情をみせるのも
仕方ないと思う。
わたしでさえ、
頭に過ったのだから。
それ程魔導師の先程の力は
圧があった。
でも其の言葉に
否と発する本人の声が上がる。
『フーリオ!俺はそんな奴の
手は借りない。お前の魔力を
信用もしている。必要ない。』
未だに射抜く視線を、
カンジに向ける皇子ガルゥヲンだ。
『いや、有るに越したことない
よ。皇子は、魔力を全く持って
いません。その為に皇子は、
極限まで自分の身体能力を
磨いてきた。そこに魔力の付加
をしているし、魔充石もある。
けれど付加には限界があるし、
術者が屠られれば、ゼロだ。
魔充石も無限に持ってはない。』
『そんな危惧するぐらいに、魔の
王は厄介な存在ってなるわけね』
マイケルの神妙な顔に、
隣で聞いていた大師少年も
無言で頷いている。
わたし達は部外者ゆえに、
其の魔の王なる者の事は解らない。
「失礼だけど『鑑定』で2人の事
を見させてもらって、彼女が
聖なる職の末裔だと解ったけど
同時に、貴方。彼の使う身体強化
は、魔力コーティングする付加と
は別の、体の中を操作する力だ。
1度施せば、無くなることがない
未来人ならではのスキルだよ。』
改めて
魔導師フーリオが説明した、
わたしにカンジが施した力の
正体を知って密かに驚く。
わたしの様子をカンジは
どこか悲し気な目で見た様に
感じる。
『解った。人体強化をその皇子と
やらに、ダウンロードしよう。』
結果として、
カンジは魔導師フーリオに
対価を承諾した、、、
自立型走行スクーターが、
1つのドアの前で停車する。
「ここが、うちのホテルの地下
駐車場に繋がる点検口よ。あ、
スクーターは自動で元の場所に
配置するから、そのままで。」
先頭で停車したマイケルが、
振り返り告げると、
スクーターから降車する。
「この先、知り合いに頼んで、
車を回してるから、ここからは
車で目的地に向かうってことで」
華僑の令嬢マイケル・楊は
さして、
わたし達に説明を求める訳でなく、
車を用意したからと、
口を弓なりにして笑った。
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