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「私、木内澪(きうちみお)。彗くん、よろしくね」
「あ、うん。よろしく」
自分に向けられる奇異な眼差しに、彗は緊張しながらも特にトラブルなく初日を終える。
「…今日はまっすぐ家に帰ること。以上」
その言葉と共に少し講義が早めに終わると、クラスメイトは皆足早に教室から出ていく。
その様子に違和感を覚えた彗は澪に話しかけた。
「木内さん…だっけ?校舎内周って帰ろうかなって思ってたんだけど、皆どうしたの?」
そんな彗の様子に、澪は『あー…』と黙り込み、そして言葉を選んで話だした。
「そっか、彗くんはこの町に来たばっかりだもんね…
この町には満月の夜と、新月の夜に人喰い鬼が出るの。今宵は満月だからね。
だから皆寄り道せずに今日は帰った方がいいよ。校舎周りは明日だね。じゃあね!」
そう言い席を立ち教室を出ていく澪を、彗は軽く手を振り見送った。そして1人になった彗は窓を開け、沈みゆく太陽を見つめ『人喰い鬼…ね』と呟き、乾いた笑いを零し帰宅していった。
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