舌。

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学校の帰り道、入学早々すっかり行きつけとなっているファーストフード店でクラスメイトたちとタムロしてから駅前で別れて、自宅の最寄りの駅に電車で到着したときには、もう日は暮れかかっていた。 真司は、いつものように、住宅街へ続く歩道をブラブラとした足どりで歩いて近所の公園に足を踏み入れた。 晩春の黄昏(たそがれ)は、あざやかな夕映えの色に染まった街路樹の緑の匂いを、ほのかに(うる)んだ微風に乗せて運んでくる。 神社や公民館に囲まれた公園は、夕方ともなれば、周辺を含めて人の気配が全くとだえる。 いまどき、日が沈むまでブランコに乗って笑い声をあげる子供なんて見かけたことがない。せいぜいママ友のイドバタ会議に付き添わされている乳幼児を昼下がりに何人か見かける程度だ。 背の高い常緑樹の垣根で四方をさえぎられた薄闇の空間に、ジャングルジムやらスベリ台が前衛的なオブジェのように浮かび上がっている情景は、どことなく非日常的で。 真司は子供じみたタワムレを起こして、地面をじっと見下ろしながら、揺れる自分の影法師の頭の後を追いかけて、フラフラと歩を進めた。 やがて公園のすみの公衆トイレの壁に影法師が行き当たったので、さすがにバカバカしくなってキビスを返した。 その瞬間、トイレの後ろから飛び出してきた人影に、いきなり背後からハガイジメにされたのだった。
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