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(番外編)泥酔した上司のオレに新人クンの本性がムキダシに!?
「うぅー……」
ヤケに胃がムカムカすんなぁ……
ああ、そうだ、今日は、ススキノ君の歓迎会だったんだっけ……
みんな、ヒトのオゴリだと思って、さんざん高いボトル空けるから。
オレも、ヤケになって呑みまくっちゃったんだよなぁー……
つーか、……オレ、いつの間に寝てたんだ?
誰か、ウチに送ってくれたのかなぁ……?
ヤケにギシギシ音が響いてっけど……ベッドのスプリングの音か?
オレんちのベッドって、こんなにキシむんだっけ?
……にしても、とにかくダリぃ。
「っう……っん……」
ダリぃっつーより……めちゃめちゃ重っ……!
呑み過ぎてハラがキツくなったせいかなぁ……スゲー苦しい……
「んんぅ……っ……あ……っ」
カラダの奥に何かがギュウギュウにツメ込まれてるみたいな、圧迫感……
押し上げられた胃袋がノド元にセリ上がってきそうで……は、吐きそう……
「うっ……うあぁ……っ!」
なんだ、この衝撃……!?
硬く熱いカタマリが、腰に叩きつけられてるみたいな……
あまりに強烈な苦痛に、重いマブタがひとりでにバッと見開いた。
「イっ……テーっっ!」
ピンク色がかった照明の下、目の前に飛び込んできたのは……
ススキノ君の、笑顔……!?
「あらら……お目覚めですか、今井さん? もうちょっと色気のある声だしてよ」
「え……?」
なんで、ススキノ君が、オレのカラダの上に乗っかってんの?
んでもって、なんで……なんで、オレもススキノ君も、丸裸なのーっ!?
「ス、ススキノ君……何をやって……っ」
いいかけた途中で、声がノドに凍りついた。
「ひぁ……っああぁぁ……っっ!?」
下腹の中をエグられるような、すさまじい感覚が再び突き抜けた。
ススキノ君は、オレの両足をいっそう広げて、奥へと下肢を寄せてくる。
オレとススキノ君の腰は、ピッタリと重なり合って……
「ちょ……ウ、ウソだろ!? なんで、こんな……っっ」
オレは、一瞬で酔いからさめた。
オレのケツに、ススキノ君の『ススキノ君』が……っ!?
「い、痛ぇーっ! ヤ、ヤ、ヤメて……くれ……っひぃぃーっ!」
熱くヤケた鉄の棒に内臓をカキむしられてるみたいだ。
「う、動かないで……抜いて……っ、もう……っ!」
ススキノ君は、整った細いマユゲをピクリと片方だけ吊り上げて、
「痛いだけじゃないでしょ? 自覚ないんですか? こんなになってるのに……」
と、オレの前をギュッとつかんだ。
「うぁっ!」
ビリビリッ……と、高圧の電流に感電したような刺激が、下肢の付け根から全身を駆け抜けた。
「やぁ……っ……ヤメて……ス、ススキノく……んっ!!」
「さっき『抜いてくれ』って言ったじゃないですか。だから、一緒に『ヌケる』までヤメませんよ」
と、色っぽく上気した細面に、意地悪なマナザシを浮かべる。
切れの長い涼しげな奥二重の目をスッと細めて……焦点のシボられた視線で、オレを鋭く射抜くみたいに……
「う……んあああっ……はあっ……うあぁ……ヤ、ヤ、ヤダ……ぁっ」
腰の裏側からも前からも、強引にアオられて……
苦痛と快感の極点に振り回されまくって、オレは、今にも気が狂いそうだった。
「イクよ……今井さん」
ススキノ君は、オレの頭を片腕でガッシリ巻き込んで、耳タブにカジリつきながら、セッパツマったエロい声でささやいた。
それから、ガバッと上体を起こして、乱暴にツナガリをほどいた。
オレの体内を圧迫していた熱が一気に引きズリ出される。
代わりに、途方もない解放感がオレをいっぱいに満たした。
ススキノ君は、オレの胸元にネットリとした残滓をタップリほとばしらせた。
イキオイ良くハジケ飛んだシブキがオレの顔にまで引っ掛かって、メガネの片方のレンズにベッタリとくっついた。
……同時に、圧倒的な解放感に弛緩したオレのほうも、たちまちビクビクとケイレンして、自分の下腹に向かって劣情をブチまけた。
みっともなく開いたヒザをそろえる気力も起きない。
「今井さん、……キツすぎて。漏らすスキ間もなかったから」
ススキノ君は、ちょっと気まずそうにボヤいた。なにそれ、なんのイイワケだよ……
ベッドの横に足を降ろして、サイドテーブルに手を伸ばしながら、
「明日、休みですよね? ここチェックアウト遅いから、ユックリできますよ」
赤いマルボロのソフトパッケージから1本つまんで口にくわえると、ホテルの備え付けらしい蛍光ピンクの使い捨てライターで火をつけて、深々と吸い込んだ。
汚れていない方のレンズを通して、ススキノ君の引き締まった後ろ姿が目に映る。
服を着ているときにはスレンダーな印象があったけど、こうして間近に裸身を見ると、想像以上に筋肉質なカラダだった。
タバコをつまんで灰皿に灰を落とし、再び口に戻す……そんなナニゲない動作ひとつにも、肩甲骨の筋肉がしなやかに動く。
そして、背中一面に描かれた鮮やかな昇り龍の彫り物も、誇示するように猛々しく、その瞳を揺らす……
「明日も天気いいらしいですよ。ドライブでも行きます?」
と、ススキノ君は、タップリと白いケムリを吐き出しながら、横顔だけ振り返った。
オレは、心底ゾッとした。
ススキノ君の口調やシグサには少しも悪びれた様子がなくて、あまりにもヘーゼンとしていたからだ。
とてもマトモな神経とは思えない。
「……っざけんな! い、いったい、どういうつもりで……こんな……!」
ススキノ君は、形のいいマユゲを片方だけピクリと上げた。
涼しげな目の奥にカラカうような笑みが浮かんでるのを見つけた瞬間、オレは、急速に恥ずかしくなって、シーツのスミッコに丸まってるベッドカバーをスッパダカのカラダの上に引き寄せた。
「なんで……こんな……」
いかにも場末のラブホテル特有のテラテラのサテンの生地の端で、顔とメガネの汚れをぬぐう。情けなさで胸がつまってきた。
ススキノ君は、意味不明なタメ息をついてから、灰皿にタバコをモミ消した。
もう一度ベッドに乗り上がってきて、
「オレねぇ、今井さんのこと、昔っから気になってたんですよ。面接で顔を合わせる前……オレがバーテンやってた店に、今井さんが客で通ってたときから」
「は?」
「童顔の幼児体型って、スゴく好みなんですよねぇー」
言いながら、オレの腰をまたいで馬乗りになる。
オレは、全身をすくませた。
「ヘヘヘヘ、ヘンタイッ! ロ、ロリコン野郎……っ」
「そんなんじゃないですよ。年上にしか興味ないし、オレ」
ススキノ君は、オレの手からメガネを取って枕元に置いた。
「……アンタ、今日からオレのもんだ」
低くささやく声は、急に、ひどく威圧的で……
「そんなの……り、理不尽だ……っ!」
オレは、ボーゼンとつぶやいた。
裸眼のせいか、目の前に近付いてきたススキノ君のマナザシが黒くにじんで見えて、ますます得体の知れない雰囲気をアオリたてる。
「絶対に……イヤだっ!」
「オレだって、ダテに背中にモンモンしょってるワケじゃねーんだよ、今井さん」
ススキノ君が、急にドスのきいた声を出した。
「………っ!?」
大きな手が鼻先に伸びてきたとき、「殴られる」と確信して、オレは、ギュッと目を閉じた。
けど……すべらかな指の感触は、オレの濡れた目尻をそっとナデていっただけだった。
オレは、おそるおそる目を開けた。
涙がフキ取られた視界には、ススキノ君の不敵な笑顔が、さっきより明るくハッキリと……とてもキレイに見えた。
「覚悟しなよ。オレ、意外とシツこいぜ?」
ススキノ君は、そう言って、オレの唇をふさぎ、宣言どおりにシツコく舌をからめてきて。オレのマブタを再び、自然と閉じさせた……
…………………………
…………………………
「……っていうのが、前半のプロットなんだけど。どう?」
おそるおそるアタシが聞くと、友人のルルちゃんは、テーブルに置いたキャラメルマキアートの、トッピングのフォームミルクをマドラーでグッチャグチャにカキ回しながら、
「いいじゃん。意識トンでるとこをヤラレちゃうって神シチュだよね。好きだわ、アタシ」
と、何度もウナズキながら言ってくれた。
アタシは、ホッとして、ご当地フラペチーノをズズズーッとすすった。
「よかったぁ。ルルさまのオメガネにかなえば、満足だわ、アタシ」
「けど、今度のBL即売会に出す新刊は、兄弟モノにするって言ってなかったっけ、モエコ?」
「それがさぁー、ハウスキーパーのバイトって、週3日の日中だけだから」
「うんうん」
「兄も弟も仕事で忙しいから、めったに家にいてくれないんだよね」
「なるほど。それで、ネタがツクレないんだ」
「そうなの。アタシって、創作にリアリティーを追求するタイプでしょ?」
「盗み聞きや無断撮影を、リアリティーと呼ぶのならね……」
「その点、今井さんとススキノくんは、結婚式場のバイトに行くたびにジックリ観察できるから」
「趣味と実益を兼ねててウラヤマシイよ、モエちゃん」
ルルちゃんは、ホーッとタメ息をついてから、キャラメルマキアートをすすった。
アタシは、「勝手に18禁BLマンガの主役にしちゃってスミマセン」と心のカタスミで謝りつつ、自分のケータイに内緒で撮りダメした「今井さんとススキノくんのツーショット写真集」を、ルルちゃんに見せびらかしてあげたのでした。
::::おわり::::
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