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3匹の雄ネコ
隼敦人は、バンド仲間から『アット』と呼ばれている
というか、彼がリーダー兼ギターボーカルを務めるバンド名前も『@./』という厨2臭のする名前なのだが、事実、中2の時につけたのだから誰も責められない
そんな彼は縁があって、秋葉原にある何でも屋で働いている
何でも屋の定義とはこうも広義なのかと思うくらい、様々な仕事が依頼される
アットは最初、この近所の何でも屋の主人から、バンドのサポートの依頼を押し付けられただけだった
それがあれよあれよという間にペット探しや別れさせ屋紛いのことをさせられ、最近では近所の探偵事務所からもヘッドハンティングの話を持ちかけられているくらい腕が上がった
だが、アットの本職はあくまでバンドであり、26歳になったいまでもそれは変わらない
一応デビューもしているし、ライブをやれば客足もそこそこ、フェスなら3、4番目にでかいステージにブッキングされる
音楽好きなら名前は聞いたことがある、くらいの知名度を、もう3年くらい維持している
決して誇れるものではない、とは思っている
それでもアットがバンドを続けていられるのは、ファンと、同じ志を持つメンバーがいるからで…
「青い!青いよ!アットくん!」
その日も、スタジオ入りまでの時間、何でも屋の事務所にいた
店主の万屋鮭児は、アットの5歳上の兄の友人だ
といっても家が近いため、アットのこともよく知っている、幼馴染みみたいなものだ
鮭児が青いと騒いでいるのは、パソコン修理中に画面が真っ青になったことでテンパっているからだ
その時、アットのスマホが鳴った
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