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「ケ、ケーサツ呼ぶぞ?!」
薄暗い店内で解放された男が、上ずった声で叫んだ
「ケーサツっすか?呼んで大丈夫な仕事してます?大丈夫?」
こういう時のアットは何かが乗り移ったかのように不気味になる
言い回し、たたずまい、目付き、オーラ…
まるで本物のようだ
実際自分も、ボーダーラインの上に立ってると思うことが幾度となくあった
アットのただならぬ気配に、男はたじろいで、ポケットから取り出したスマホを取りこぼした
スマホが、フロアをむなしく滑っていく
「ホラー映画並みの怖がり方するなあ。自分で死亡フラグ立ててどうすんの」
アットは男に近づくと、腰を屈めて男の顔を覗き込んだ
「話聞きたいだけ。OK?」
男は歯の根が噛み合わず、ガタガタと震えながら首を縦に振った
※※※※※※※※※※※※※※
スタジオに着くと、ガラス張りの狭い喫煙スペースで、マサトがタバコを吸っている姿が見えた
アットはノックして、自分もその狭いスペースに身体を滑り込ませた
「喫煙スペースは厳禁じゃないの?ボーカルさん?」
「俺の喉より大事なことなんだろ?」
「もう突き止めたのかよ?」
アットは1枚の紙をマサトに渡した
「ここは空気がよどんでんなあ」
それだけ言うと、アットはすぐに喫煙スペースから出ていった
紙には【長谷川公博】と書かれていた
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